仕事でオンラインシステムを使うコツーー私なりの物語

ヨーロッパ・ジャパン ダイナミクスにようこそ!代表の栗崎由子です。

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 最近急にスカイプやZoomといった様々なオンラインシステムを使って仕事を進める機会が増えました。今では欧州や北米では既に、コーチングのような人の心に関わるデリケートな仕事も頻繁にオンラインで行われています。

欧州でビジネスをしている中で、電話会議から始まって試行錯誤しながらたどり着いた私なりの使い方のコツをお伝えします。住む場所にかかわらず、家で仕事をされる方には特に知っておくと便利なコツなので、ぜひ読んでみてください。

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online-meeting

ジュネーブに住む私にとって、日本の人々はもちろん、欧州や北米の人々と仕事を進めるために、スカイプやZoom, Webinarのような手軽に使えるオンラインシステムは必須だ。

ただ、オンラインは対面のコミュニケーションとは違うため、使い方にコツがある。特に、ワールドカフェのようにグループディスカッションを行う場合はなおさらだ。

10月17日、私はIAFジャパンの主催した、ハイブリッド・ワールドカフェにジュネーブから参加する機会があった。これはZOOMというシステムを使い、東京を本会場にして、アジアや北米、欧州からの参加者を繋ぐ、意欲的な試みだ。対面とオンラインの両方を用いてワールドカフェを行おうというのである。

(“ワールドカフェ・アジア パート2 グローバル・コラボレーションの新たな可能性”。詳細はFacebook のイベントページを参照; https://www.facebook.com/events/1269917323029515/

私もその時に「私なりの物語」と題してオンラインで仕事を進めるコツをプレゼンしたのでここにまとめておこう。

☆ オンラインを仕事に使うコツーー「私なりの物語」

1.背景 私のオンラインシステムのつきあい

  • 私は以前、世界230カ国に拡がる世界規模の企業に勤務していたため、電話会議は仕事に欠かせなかった。その後技術の発展につれてWebinar,  テレビ会議なども使ったが、合計するとこのような遠隔コミュニケーションシステムを20年以上使っている。
    • 全てが国際会議だった。
    • プロジェクトマネジメントなど、会議を頻繁に行う必要のある時には特に便利だった。
  • フリーになった今も多用している。今はスカイプを多用している。Webinarも時々使う。

2.私の学び

  • コツは、心の距離の克服だと思う。
    • 直接に顔を見ないため、互いに得られる情報が少ない。そのため感情が伝わりにくい。
    • 背後事情も伝わりにくい。
    • ネット(電話)を切ったら、すぐに元の日常に戻る。会議中には参加者相互間にそれなりの熱意が生まれるものだが、オンライン会議ではそれが持続しない。
    • スカイプでもカメラを使用する方がコミュニケーションは快適だ。
  • 多すぎる機能は不要だ。例えば、企業用として毎回パスワードを変える機能のある電話会議がある。これは設定が煩雑になるだけで、実際には不要な機能だ。
  • 国際会議の場合、電話会議は手軽な反面、料金が高いことが問題。今はネットを使うのでその問題はほぼ克服できたのではないだろうか。

3.私なりの解決策

  • 以前、欧州、北米の同僚たちのリーダーとしてあるプロジェクトマネジメントのリーダーを務めた。私は特に問題の無いときも、定期的に(週一回)ミーティングを行なった。
    • 人が集まると、なにかしら話すべきことは出てくる。それが大事だと思う。自分はこのチームに属しているという感覚を維持できるのだ。
    • ところが、プロジェクトリーダーが私の後任者に変わり、彼の提案で何か案件のあるときだけ電話会議をしよう、ということになった。あっというまにその仮想チームは消滅した。
  • オンラインコミュニケーションには、人としての感情を込めることを、限られた手段だからこそ大いに留意しなければならない。嬉しいことに、このような感情を込めたコミュニケーションは日本人の得意分野ではないだろうか?
  • Webinarは仕事の打ち合わせに便利だ。顔と資料が両方見られる。リアルタイムで資料の修正もできる。

4.べからず集

  • オンライン会議中にキーボードを打つべからず。マイクが音を拾って耳障りだ。
  • 時差に注意すべし。技術に時間はなくても、人は時間から逃れられない。以前、時差の都合で夜中の2時にワールドカフェ参加の経験あり。ところが頭が働かない。これでは折角のワールドカフェも意味がない。

☆ ハイブリッド・ワールドカフェについて オンライン参加者としての感想

  • ジュネーブの自宅から日本の人々と話せたのは良かった。ワールドカフェで同じグループになった人の中には久しぶりにネット上で再会した日本の友人もいた。
  • プレゼンを聴いている間は結構退屈なものである。発表しておられる方には申し訳ないのだが、この退屈さはどんなに面白い発表であっても逃れられないのではないか?というのは、オンライン参加だとリアルの会場と違って目のやり場がない。スクリーンを睨むほか無い。こういう状態は退屈なものなのだと知った。これはなんとかして解決すべき問題だと思う。
  • 今回私は一人で日英語の両方でプレゼンを行ない、議論も行なった。これは相当に頭の負担が大きい。第一プレゼンしながら考える余裕がない。たとえ複数の言葉を話せる参加者であっても、外国語が混じるときには通訳をつける必要があると思う。
  • 最初の二つのプレゼンが終わった後コーヒーブレークがあったが、これはホッとした。気が抜けて良かった。オンラインでもブレークの時間は必用だ。
  • オフライン会場の人々にはイベントの後懇親会があったが、オンライン参加者にはない。オンライン参加とは孤独なものである。

☆ オンラインを使いこなすコツをテーマに最近幾つかの記事を執筆しました。もっと深く知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

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ジュネーブに広まる公衆無料Wi-Fi ーー欧州ICT社会読み説き術 (22) ((o)) ville-de-geneve

ジュネーブ市の来年の予算の目玉の一つは、公衆Wi-Fiサービス向上、と新聞報道で知り、筆者は我が意を得たりと思った。それというのも、帰省した日本にで、Wi-Fiの壁に突き当たった、苦い経験があるからだ(「いつでも?どこでも?だれとでも?の巻」、あけぼの2012年2月号)。

ICTが街のインフラの随所に使われる一千万都市東京で出来ないことが、人口20万人のジュネーブ市では出来ている。それはなぜだろう?この素朴な疑問を持って、市の公衆WiFi普及責任者、サヴェリオ・リベルト氏を訪ねた。そこで見えて来たのは、いかにもスイスらしい、公平精神に裏打ちされた、地道な政策だった。

ネットアクセスの民主化

ジュネーブ市の公衆Wi-Fi サービスは、2004年に始まった。

市内には、市役所関係のオフィスや、市立の図書館、美術館など、公共の建物が200から250ある。それらは、実務のために、もともと光ファイバーの専用線で繋がっていた。

2000年代初めのこと、市のオフィスや図書館などを訪れる市民へのサービスとして、無料Wi-Fiをという要望が高まった。その要望は、程なく、ネットアクセスの民主化という政策理念に発展した。

つまりこういうことだ– インターネットは生活に必要不可欠になった。利用者はアクセス料を電話会社などのサービスプロバイダに払って、その便宜を享受する。ではお金を払えない、貧しい人はどうなるか?市には、貧しい人にも公平にインターネットの便宜を与える義務がある。ここに、誰にでも、かつ無料で提供される理由がある。

こうして、公衆Wi-Fiは純然たる市民サービスとして始まり、今もその理念は変わっていない。国連欧州本部や、数百のNGO(非政府機関)を擁するジュネーブでありながら、国際会議参加者、観光客など、旅行者の便宜は当初考えてもみなかったところが面白い。ジュネーブを訪れる旅行者にとっても、誰でもアクセスできて、その上無料のWiFiは本当にありがたいのだが。

成長を続ける公衆Wi-Fi

公衆WiFiは利用者に好評と見えて、急成長している。アクセス数を見ると、2008年以降は毎年倍加している。これは、スマホ、タブレットなど、ラップトップよりも遥かに軽くて持ち運びの容易なネット端末が普及したためだと、リベルトさんは見ている。

サービス開始から約10年たった現在 (2013年10月)、ジュネーブ市内の約70箇所でWi-Fiアクセスが出来るが、今年中には80箇所になる予定だ。そのためのアクセスポイント(無線機)は290個、大変な数だ。(ジュネーブWi-Fiマップはこちらへ)

セキュリティーへの配慮

2013年8月からアクセス方法が少し変わった。ネットを利用するために、4桁のコードをまず手に入れる必要ができたのだ。これは、公衆WiFi利用者の特定を可能にすることを義務づける連邦政府指令が出たためである。万が一公衆WiFiを使った犯罪が起きた場合、その究明を可能にするためというのが、その理由だ。(註:スイスでは空港、鉄道駅でも公衆WiFi設置が進んでいる)

指令に従って、ジュネーブ市も 公衆Wi-Fiへのアクセス方法を変更した。スマホなどでWiFiネットを掴むと、まずジュネーブ市ポータルがあらわれる。そこから、自分の携帯電話番号を入力すると、すぐにSMSで、4桁のコード番号が送られてくる。

これはよくある仕組みではある。しかし、それまで Wi-Fiアクセスが全く自由だったことを思えば、利用者にとっては面倒になる。公共サービスの使命として、ICTに苦手感を持つ市民も容易に使えるシステムでなければならない。そこで、リベルトさんらは、配慮をした。そのコードは6ヶ月間有効であるうえ、ジュネーブ市の提供する公衆WiFiなら、どこでも共通としたのである。そのおかげで、利用者は、少なくとも6ヶ月間は、毎回アクセスコードを取得する手間を省けることになった。

今までのところ、ジュネーブ市の公衆無料Wi-Fiが、犯罪などに使われたりネットに不法な侵入があったりしたことは無いそうだ。何か起こるとすれば、大半の問題は、ネットワークではなく、サイト自体(児童ポルノなど)や、使い方(公共無線ネットでオンラインバンキングを使う)などにあるのではないか、とリベルトさんは語る。市では、利用者にそういう使い方をしないよう、注意を呼びかけてもいる。

開かれたWi-Fiの恩恵は?

将来は、ホットスポットの数を順次増やすと共に、現在の機器の刷新も行なう予定だ。また、これからは旅行者への情報提供も、もっと積極的に行ないたいとリベルトさんは思っている。

住人だけでなく、旅行者にも恩恵の大きい公衆無料Wi-Fiだが、今のところ、観光案内所には公共無料Wi-Fiサイトマップは置かれていない。しかし、外国旅行者の情報交換するブログには、こういう情報がちゃんと載っていて、ジュネーブの株を上げている。ジュネーブの公衆無料Wi-Fiは、市民を対象として提供されてきたが、市民以外の人々にも大きく開かれていたために、想定外の大きな利益を、利用者にも提供者にももたらしたといえよう。

今後日本は、東京オリンピックを控え、外国からの訪問者が増えるだろう。その人々から「どこでも、誰でも」使えるWi-Fiの要望は出てくるに違いない。その提供方法を考えるとき、ジュネーブの例は参考になると思う。

ジュネーブ公衆無料WiFiマップ 

掲載稿はこちら→ 欧州ICT社会 読み解き術 第二十二回、NTTユニオン機関誌「あけぼの」2013年 12月 & 2014年1月 合併号に掲載

手作りオルゴール ー ディジタル時代に際だつ職人技、欧州ICT社会読み説き術 (20)

スイスはオルゴール発祥の地である。オルゴールの元祖は、14世紀から始まったという、カリヨン(時計塔に組み込まれた鐘)だった。その後、19世紀末に音の部分が時計から独立し、現在のようなオルゴールが誕生した。スイス製のオルゴールは、今もすべて手り。その心に響く音色は、世界中の人に愛され続けている。

ディジタル機器、ディジタル音楽全盛の時代に、伝統技術の粋、オルゴールは、どういうありかたを見せているのか?筆者は、世界最古のオルゴールメーカー、リュージュ社(スイス)の社長、クッパーさんにお話しを伺った。

世界最古のオルゴールメーカー

現在、オルゴールを生産する会社は、世界に三社だけ。中でも、スイスのリュージュ社は、150年という最古の伝統を持ち、スイスのみならず、欧州唯一のオルゴールメーカーでもある(他の2社は日本と中国)。オルゴール技術の発祥したジュラ山中にある、本社を兼ねた製造工場では、熟練の職人たちが、小さくて精密な個々の部品製造から、オルゴール組み立ててまでを行なっている。音の調整も、人の耳で行なう。

このディジタル音楽全盛時代に、なぜ今も機械式音楽なのか?多くの産業の製造ラインがコンピュータ制御で行なわれる時代に、なぜ、人手による生産なのか?リュージュ社にとりイノベーションとは何なのか?リュージュ社の社長、クッパ-さんにお話しを伺った。

伝統と新しい技術の架け橋

栗崎:リュージュ社のオルゴール製作に、ICTは使われていますか?

ク氏:リュージュ社は、伝統技術と新技術の架け橋でありたいと思っています。例えば、お客様に、ご注文されたオルゴールの音を確かめて頂くためにMP3を、オルゴール箱のデザインには、3Dデザインシステムを使っています。また、人の耳には聞き分けられない微細な音の調律にも、ICTシステムを使っています。

けれども、オルゴールの心臓とも言えるムーブメント制作工程に、ICTは一切使っていません。

オルゴールの生み出すのは、芸術と感情の接点です。お客様に喜んで頂ける最良のオルゴールを作るために、私たちは、伝統技術と新技術との最適なバランスを、常に見つけて行かなければなりません。

伝統にこだわる理由

栗崎:製造業にもICT導入が進む時代に、なぜリュージュ社は、伝統的な生産工程を続ける道を選んだのでしょう?

ク氏:食事に例えてみましょう。

宇宙船内での食事のために開発された宇宙食でも、必要な栄養は摂取できます。けれども、宇宙船内では仕方がないとはいえ、そのような食事で心の楽しさは満たされるでしょうか?

反対に、私たちが家族や友人たちと楽しく食事をする場面はどうでしょう?そこには、美味しい味付け、美しい盛りつけ、心の籠もったサービス、そして楽しい会話があります。栄養価だけではなく、その他の要素が揃って初めて、喜びが生まれます。それは、感情の伴った食事なのです。

音楽を聴く喜びも、同じです。音にも質と感情が伴わなければいけません。そのような音は、熟練の職人の手を経た工程を通して初めて、生み出すことが出来るのです。コンピュータの作る音楽には、30秒間で人の心を打つことは出来ません。

写真1 ある英国の貴人の婚礼に贈られた、つがいの歌う小鳥。オルゴール技術の粋!
写真1 ある英国の貴人の婚礼に贈られた、つがいの歌う小鳥。オルゴール技術の粋!

イノベーションはお客様の声から

栗崎:生産過程へのICT導入を考えたことはありますか?

ク氏:以前に試したことがあります。けれども、結果は散々でした。お客様からも不評を買いました。その経験から、オルゴールの音楽は、コンピュータの手に負えないことがよくわかりました。技術は目的達成の手段であっても、技術自体が目的であってはならないのです。

栗崎:リュージュ社にとってイノベーションとは何ですか?

ク氏:お客様の声をよく聞くこと、目と耳を大きく開けて、世の中を見ることに尽きます。イノベーションは、そこから自ずと生まれます。

現代は、技術発達が急速に進む反面、製品やサービスを提供する側の人々が、お客様の声を、充分に聴かなくなっていますね。技術が先走り、技術愛好者はともかく、そうでない大勢の人々のニーズを忘れていると思います。

リュージュ社は150年前に設立された古い会社です。けれども、私たちは伝統に縛られてはいません。これからも、常に新しい時代の要素を取り入れながら、伝統技術に培われたオルゴールに、新しい生命を吹き込み続けて行きたいと思います。

筆者:ありがとうございました。

写真2 iREUGE iPhone充電器を組み込んだ。電話が着信すると、オルゴール音楽が始まる、この優雅さ!

インタビューを終えて、リュージュ社は、人の心に響く音を提供するという使命を、見事に捉えてブレがないと思った。生産工程は伝統技術に支えられているが、ICTを排除してはいない。そこで問われるのは、手作業か、機械化かという二者択一ではない。リュージュ社の使命にとり、最善の技術を選ぶということだ。そう考えると、同社が決して守りの姿勢にないことにも合点がいく。

クッパ-さんは、イノベーションはお客様の声の中にある、という。ここに技術を生かすための、発想の基本があると思った。

伝統技術の生み出す音色を、リュージュ社のサイトから聴くことが出来ます。画面を右にスクロールして曲目リストに行ってください。

掲載稿はこちら→ 2013 欧州ICT社会 読み解き術 第二十回、NTTユニオン機関誌「あけぼの」2013年 10月号に掲載

ソーシャルメディア時代のラジオ、これがスイスインフォの選んだ道 ー 欧州ICT社会読み説き術 (19)

スイスインフォはスイス公共放送協会(SRG)の国際サービスの名称だ。スイスインフォは、外国在住スイス人向けのラジオ放送として始まった。それが、今日では、ラジオを離れ、ウェブ上のメディア プラットフォームに進化を遂げた。しかも世界に向けた情報提供というサービスの核心を変えないまま。これはメディアとして180度の方向転換だ。ラジオというマスメディアであり、プッシュメディア(利用者が自ら行動を起こさなくても、情報を与えられるメディア)という存在から、ウェブサイトという、個人がアクセスする、プルメディア(利用者が自ら行動を起こして、情報を取りに行くメディア。)への変化だからだ。現在のスイスインフォは、マスメディアと個人メディアの中間ともいうべきソシアルメディアの利用にも、積極的に取り組んでいる。

情報化時代に、ラジオはどう変化していくのか?そのひとつのあり方が、スイスインフォに見られるのではないか。スイスインフォの、企画担当、クリストフ・ブルッタン氏に、詳しいお話しを伺った。

スイスインフォの歴史

スイスインフォは、国際短波放送として始まった。1935年8月1日、スイス建国記念の日に、当時の大統領の声をアメリカに放送したのが正式な開始とされている。

国際的には、1920年代から、短波ラジオ放送局が多くの国に誕生した。また時期を同じくして、国際政治の舞台ではジュネーブに国際連盟が設置された(1919年)。そこで、世界平和の中心地として広く世界に、また国外に住むスイス人に向けて情報を発信するためのラジオ局ができたのである。当時は、ラジオノスタルジアというニックネームで呼ばれた。

スイス発の国際ラジオ放送は、第二次大戦中と、それに続く冷戦期には、 世界中のリスナーから信頼を得た。中立国スイスのラジオは、どの陣営にも属さない、唯一の公正な情報源だったのである。こうして、スイスの国際ラジオ放送は、在外スイス人には国内情報提供を行なう、また国際的にはスイスの中立を支えるメディアとして、不動の地位を築いた。

ラジオからの転身

1990年代に入りインターネットが誕生するなど、情報通信技術革命が起きた。これはスイスインフォにとっては危機だった。インターネット、衛星放送の登場により、国際的情報提供は、短波放送の独壇場ではなくなったのだ。

そこに政府から、厳しい予算カットの要求が来た。生き残るために、スイスインフォは、少ない予算で今まで通り質の高い情報を世界に発信するメディアに、変わらなければならなかった。それも短期間で。

1999年、スイスインフォは、ラジオ放送を止め、ウェブサイトをプラットフォームとして、多様なメディアを包含する情報サイトとして再生した。ウェブサイトに変えたのは、経費が安いからだったとブルッタン氏は語る。

ラジオからウェブへという、技術も視聴者とのコミュニケーションの在り方も全く違うビジネスへの転換だ。これは大規模なリストラだったろう。しかし、レイオフは無かったという。ラジオのスタッフが一丸となり、ウェブの仕事をしながら必要な知識を学び、経験を積んでいったというから、驚く。

スイスインフォは、ウェブサイトになっても社風は変わっていない、とブルッタン氏は胸を張る。今でも、ラジオ時代と同じように、スイス発のニュースの公正な視点と、情報、技術の質の良さを誇っている。

マルチメディア戦略

現代のコミュニケーションの潮流を睨んだ、スイスインフォの目標は二つある。モバイル機器に対応することと、事件、時流の変化に敏捷に対応することだ。

モバイル機器については、それ向けのコンテンツを提供するかどうか、現在試行中という。

敏捷であるために、ソシアルメディア、特にフェースブックを活用している。

スイスインフォは、フェースブックの、読者と直接対話ができる点を高く買っている。フェースブックには10カ国語でスイスインフォのファンページがあり(中国語は、中国専用の別のプラットフォームを使用している)、そこに情報を載せると共に、書き込みをするファンから情報を得ている。書き込みを直接報道することはないが、アラブの春など、時々刻々変化する状況を、現場の生の声から入手できることは大きい。こうして、スイスインフォは、ソシアルメディアの双方向性を、そのエンジンにしている。

スイスインフォは、ウェブやソシアルメディアを活用しているが、コミュニティーマネジャーは置いていないというところが興味深い。各国語担当の記者たちが自身でそれぞれの言語のサイトを管理、活用している。「 我々は、読者と(直接)対話をしない。」と語るブルッタン氏の言葉に、報道機関にとってのファンページは、消費財製造、販売企業のそれとは役割が異なることを覗わせられた。

多言語はスイスの強み

スイスインフォには、十の言語についてそれぞれ、各言語のページを担当する、合計60人にのぼる記者がいる。その記者全員に共通の言語がないことが、日々の仕事を廻していく上での悩みと、ブルッタン氏は苦笑いする。

しかし、十カ国語のそれぞれで取材・編集する人材を国内で見つけられるところが、スイスの凄さだ。国際性の高いスイスの社会資源の豊かさを、垣間見る思いがする。

ちなみに、2012年現在、スイスに住む外国人は、総人口の23%。国際結婚によるスイス国籍取得など、スイス国籍を持つ外国人を勘定に入れると、この割合はもっと増えるだろう。

世界に向けて情報発信を

スイスインフォでは、現在いろいろなメディアの使い方を試行中という。ソシアルメディアの発展など、急激なメディアの変貌により、コミュニケーションの習慣は変化しつつある。その中で、ラジオからウェブへと飛び移ったスイスインフォは、更にどのように変化するのか、将来を見まもりたい。

ここで忘れてならないのは、ラジオからウェブへとメディアは変わっても、スイスインフォの一貫した情報戦略の基本は変わっていないことだ。それは、情報を発信することにより、外国からの理解を得るということである。スイス発の国際ニュースは公正中立という評価と信頼は、今も変わっていない。それはまた期せずして、欧州の中央に位置し、大国(軍事的には強国)に囲まれたスイスの、軍事力を使わない、ソフトディフェンスになってきたのではないだろうか。

現代の日本にとり、スイスのような情報発信に積極的な姿勢は、ますます必要になっていると思える。情報化社会のディフェンスは、積極的に情報を出して行くことにある。日本にとって、隣国との距離が縮まるに従い、国際世論を味方につけたい場面は増えている。日本人もどんどん情報を発信して、外国との相互理解を深め、世界とより良く繋がって行って欲しい。

掲載稿はこちら→ 2013 欧州ICT社会 読み解き術 第十九回、NTTユニオン機関誌「あけぼの」2013年 9 月号

ジュネーブと国際会議と(4)国際会議のお手本——先輩の方々

私がITUの会議に出席し始めた頃、日本代表団としてご一緒させていただいた先輩方からは、数え切れないほど多くのことを教えて頂きました。その方々はきっと、私に何かを教えようとは意識していらっしゃらなかったと思います。けれども、国際会議1年生の私にとっては、先輩の皆さまにとって当たり前のこと一つ一つが、すべて勉強でした。

K社のOさんは、当時既にCCITT(現ITU-T)SGII副議長の要職に就いておられました。会期も大詰めに近づくと、分科会で出された結論を持ち寄ってSGII全体で討議する、大きな会合が始まります。その会議で、Oさんは議長団の一人として、いつも壇上の席におられました。私が遠くから拝見すると、長身で細身でいらしたOさんは、いつも口元に穏やかな微笑みを浮かべておられました。

それだけでも大変なことなのに、どうでしょう!Oさんが、言葉を選んで、静かに、ご発言を始められると、大勢の参加者がシンとして耳を傾けるのです。今まで、お互いに強い言葉で、激しい議論をしていた人たちが。

Oさんは、柔らかいお声で、ゆっくりとお話しされます。英語はお上手でしたが、立て板に水のような話し方ではありません。そのOさんの言葉を一言も聞き漏らすまいとするかのように、会議場にいる人々が、 一心に耳をそばだてています。

それを目の当たりにして、話す内容に実があれば、人は一生懸命に聴くのだとわかりました。英語のうまい下手、声の大小ではないのです。Oさんのそういうお姿に、国際会議1年生大いに励まされました。

ITUに限らず、多くの国際会議は英語で進められます。英語が自分の言葉である人たちが会議に馴染みやすいのは自然なことです。同時に、発言や提出文書の論理の組み立て方も、どこか英語文化の影響を受けてしまうものです。

けれども、国際会議は長丁場です。焦らなくて良いのです。会議は、時間をかけて議論し、相手の発言に耳を傾け、必要なら根回しをするプロセスでもあります。Oさんのように、ご自分のお考えをゆっくり話す方が、英語が母国語ではない大多数の会議参加者にとっては、発言が分かり易くて良いのです。発言内容を理解されるということは、国際会議では大きな強みです。発言の内容自体が参加者の役に立つものであることは、言うまでもありませんが。

もうお一人、Oさんと同じK社のTさんにも、そのお仕事ぶりに多くを勉強させていただきました。

Tさんは、私が出席していた研究会期に、クレジットカード通話利用手順の標準化をテーマにする、ワーキングパーティー(WP)の議長を務めておられました。私も会期の初めからこのWPに参加して、勧告案(ドラフト)作成作業を経験しました。

当時のCCITTでは、各研究会期の初めに、勧告案作成のために課題別のWPが作られました。つまり、WPの仕事が、同じ時に一斉にスタートするのです。

ところが、会期を重ねるにつれ、各WPの進捗状態に差が出てきます。競争するわけではありませんが、勧告作成の進み方の速いWPと遅いWPが出来てくる。

その中で、Tさんの議長を務められたWPは、一番進捗の速いことが誰の目にも明らかになってきました。

Tさんは、WPメンバーの誰よりも沢山仕事をされるのです。Tさんはいつもドラフトを用意して会議に臨んでおられました。勧告書の作成ですから、その文案は一語一語慎重に検討されます。その議事を捌き、修正案を提案するのは彼。修正が合意されると、その文案を盛り込んだ、第x版勧告書案を作成するのも彼。WPの進捗状況報告を書いて、SGII議長に提出するのも彼。

そういうTさんの、お仕事ぶりを終始拝見し、建設的な意見を提案する人間が、結局は会議を引っ張っていくことがよくわかりました。新しい勧告を作るという、いわば無から有を作る任務を負った会議の場合、その議長の仕事は、次々に具体案を提案していかなければならないのだと思いました。

私はたまたま他のWPメンバーでもありましたが、その議長はTさんのような仕事の仕方をしていませんでした。彼は、「WPメンバーが、勧告案を提案してくれない」とぼやいていましたけれど、勧告案作成は全く前に進みませんでした。

その他にも、国際会議のお手本を見せてくれた先輩方は、大勢おられました。

私が参加するまで、日本代表団のたった一人の女性メンバーだったNさん。緊張してカチコチになっていた私には、誰とものびのびお話しをされるNさんのお姿が、お手本となりました。

K社研究所でISDNを担当しておられた、闊達なIさん、SGIII(国際電信電話料金)で、議長として素晴らしいバランス感覚を発揮され、ともすれば縺れがちになる議論を見事に捌いておられたMさん、国際電話料金の専門家として当時から重みのあったSさんなども、皆、尊敬する、国際会議の大先輩でした。

掲載: ITU ジャーナル Vol. 44, No. 7, 2013年7月号

国際会議一年生の教科書(3)ジュネーブとかけて、フェイスブックと解く、その心は?

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【ジュネーブとフェイスブックの深い関係】

ぴーちゃん、この前の国際シンポジウムではどうしても自分から他の人に話しかけられなかったと言ってたね。

良いことを教えてあげる。他の人がぴーちゃんに話しかけてくる方法があるんだ。

え?と思うでしょう。

その種明かしはね、フェースブックと同じなの。

ジュネーブとフェイスブック?それ、何の関係があるの?

じゃあ、行ってみよーー!

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ここでは、ジュネーブ、つまり国際会議の場所という意味です。

国際会議とフェイスブックには、大きな共通点があるんです。

ジュネーブとかけて、フェイスブックと解く、その心は?

“自分から情報を発信しないと、情報は集まらない。”

国際会議でも、フェイスブックでも、人と知り合おう、他の人が何をして、何を考えているか知ろうと思ったら、まず自分から考えを述べる、つまり情報発信することです。

ハッキリした意見でなくていいのです。質問でも、コメントでも、また、議論するテーマに関係のあることなら何でもいいのです。自分の考えでなくても、テーマに関する情報、つまり、自分の知っていることでもかまいません。会議なら、議事進行についての質問でもいいと思います。

私は友人に誘われてフェイスブックのアカウントを作ったものの、何もせずに2年ぐらい放置していました。あれこれ使い方を研究していたら、あっというまに数時間たってしまいそうだったし、友人とどう繋がるのか、全くわからないし。まして面白さなんてわかるはずもありませんでした。

そんな状態でしたから、フェイスブックでつながる友人の数もごく少ないまま。たまにサイトを見ても、何もめぼしい情報は見つからず、という2年間。なぜフェイスブックに人気があつまるのか、理解できませんでした。今思うと、情報の来ない悪循環を自分で作っていたのです。こんな状態でしたから、フェイスブックを活用するなど考えも及びませんでした。

フェイスブックを俄然見直したのは、2012年のこと。私はボランティアで、あるグループをジュネーブで立ち上げました。その宣伝方法を模索していた時に、ある地元の友人が、「あなたのグループ発足を私のフェイスブックに載せてあげるわ。私は200人ぐらいの友人とつながっているから、その人たちには知って貰えるわ。」と言ってくれたのです。

まさか、フェイスブックが役に立つ?と思いましたが、実際に自分でもやってみて驚きました。思わぬ人々から、コメントや、「いいね」のサインが返ってくるのです。目からウロコが落ちました。自分から手を挙げると、人はそれを見て反応してくる。これが発見でした。

そうと気付くと、私も他の人の記事や写真にコメントしたり、「いいね」をクリックしたりするようになりました。そんな活動(?)が、少しづつ積み重なって友人の輪も拡がり、昨年の夏休みには、20数年ぶりに留学時代のクラスメートたちとジュネーブの近くで再会することができました。フェイスブックのおかげで、途切れていた繋がりが復活したのです。まさに、フェイスブックの原点みたいな経験でした。

ITU-RAG_2017-0428談笑
会議の合間に談笑する人々。こういう機会も大事です。(ITUにて)

では、会議の場合はどうでしょう?

国際会議の場合は、会議中に何か一言、発言することです。会議に慣れていなければ、会期中に一回でもいいのです。

すると、反応が返ってきます。その時すぐにではないかも知れません。でも、私は、後でコーヒーブレークの時などに、誰かが寄ってきて、「さっきあなたの言ったことですが、、」と話しかけてくれる経験を何度もしました。これがフェイスブックの「いいね」みたいなもの、つまり、共感や関心です。

そうなればしめたもの。そこからの会話の展開は、自分がリードしていけます。私の発言が話題の出発点なのですから。

この方法のいいところは、他の人の会話に無理に入って行かなくてもいいことです。私が待っていれば、他の人が話しかけてきてくれるのです。しかも、私のよく知っているテーマで。これで、言葉のハンデの壁は、だいぶ低くなります。

会議の場では、大抵の人には、新しい知人を作りたいという気持ちがあるものです。そういう人々は、他の人に話しかけるきっかけを探しています。だから、私がそのきっかけを提供するのです。

同じテクニックは、国際会議の他にも応用できます。なにかのコンファランスでもセミナーでもいいのです。自分が前に出て発表する場合は、他の人に自分を知って貰えますからそれでいいのですが、聞き手の場合はそうはいきません。そういう時、私は、一回は手を挙げて、質問でもコメントでも、何か一言発言することを自分への宿題にしています。

今回はテクニックめいたこと書きましたが、私は心とテクニックは深く繋がっていると思います。心があって初めて、テクニックは生きるのです。

心の目を、議論そのものだけでなく、他の参加者や会議そのものにも向けてみてください。議論にもう一つ自分の見解を加えること、テーマに関して自分の知っていることを他の参加者とシェアするということは、会議に貢献することにもなります。

こうして、会議は一人一人の参加者が作り上げていくのです。

掲載: ITU ジャーナル Vol. 43, No. 6, 2013年6月

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コミュニティー・マネジャー?ー 欧州ICT社会読み説き術 (16)

ソーシャル ・ネットワークの時代

日本の選挙運動もソーシャル ・ネットワーク時代に入ったようだ。今年四月に『公職選挙法』が改正され、七月の参院選から、選挙運動にインターネットが使えるようになると聞く。私のように外国に住む有権者にとって、これは朗報だ。次回の選挙からは、政党や、立候補者のホームページを見て、誰に投票するか決めることができるからだ。今までそういう手段が全くなかったので、在外邦人選挙では、まるで眼を閉じて投票する気分だった。法改正で、ツイッターやフェイスブックといったソーシャル・メディアを使って演説の案内や投票の呼びかけもできるようになる。

これを契機に、ソーシャル・メディアを通じたコミュニティ・マネジメントの重要性が、日本でも飛躍的に高まるかもしれない。ソーシャル・メディアは双方向であるという点で、政党が今まで選挙運動で多用していた一方通行のメディアとは大きく異なる。そこに、コミュニティ・マネジメントの重要性が生まれる。

欧州でも、コミュニティ・マネジメントを行なう「コミュニティー・マネジャー」は、成長著しい職種である。この仕事は、初めはIT企業やウェブ関連企業で導入されたが、今では、一般的な企業も導入。例えば、スイスでは、銀行や時計メーカーの中に、このポストを設けている企業があるし、大手のNGO(非政府機関)、例えば国際オリンピック委員会(IOC)も、そのような職種を置いている。

企業・団体の窓口的存在

コミュニティー・マネジャーの職務は大まかに言うと、企業ならばその商品、サービスやブランド、また、社会的目的を持って設立された団体なら、その目的(例えば自然環境の保護。政党もその一つ)に関心を持つ人の集まる集団(コミュニティー)とのコミュニケーションの窓口となり、そのコミュニティーを発展させ、さらにコミュニティーからのフィードバックを企業や団体の発展に必要な情報(リソース)として、内部に伝達することにある。

コミュニティー・マネジャーの活動は大きく四つに分けられる。この場合、企業なら潜在・顕在の顧客、団体なら、その目的を支持する人々に、①情報交流の場を作ること(顧客・支持者の参加を呼びかける)、例:ツイッターのフォロー、フェースブックのグループページ②ファンを増やすこと(ロイヤルティ育成)③その人々が企業・団体に何を期待しているか、何を必要としているかを対話の中から汲み上げ(顧客・支持者の声の収集)、企業のマーケティング、商品開発部門や、団体のリーダーたちにフィードバックし、将来の商品や、サービス、活動の発展、改善、に結び付けること、そして、④顧客や支持者に、その意見や要望が役立てられ、改善されたことを責任を持って伝えること、こうして顧客・支持者からの信頼を育て、強めること、である。

このような任務を遂行するためには、コミュニケーション専門家としての充分な経験と訓練が必要だ。

コミュニティー・マネジャーには、人(顧客や支持者)の声の奥にある気持ちを汲み取る力、企業や団体の商品・目的を理解し、愛情を持ち、自分の所属する団体の代表者であると同時に、顧客を理解しその味方でもあること、その上、自社、団体の発信する情報を受け手が快く理解できるように伝える(話す、書くなど)力が必要である。この仕事にとって、ソーシャル・メディアは、コミュニケーション手段の一つであって、それ自体は目的ではないことにも注意したい。

SNSが双方向性を加速

コミュニティー・マネジャーの担う仕事は、企業なら、広報部やお客様サービス担当部門が従来から担当して来た。

ところが、ソーシャル・メディアの時代になって、コミュニティー・マネジメントの性格は一変した。 フェースブックや、ツイッターなどに代表されるSNSの爆発的な発展により、人々の情報発信力が飛躍的に大きくなったからだ。企業・団体と個人との情報の流れの方向が、 企業・団体 からの一方通行から、双方向になったのだ。

ソーシャル・メディアでは、一人が何かを発言する(情報発信)と、その声は、その人と繋がる大勢の人々(数人から数万人規模)に一度に伝わる。

伝わった側の人々は、その同じ情報を、さらに自分の友人・知人の輪に拡げることができる。その情報が、あなたの扱う商品についてだと想像してみてほしい。一つの発言の波及力は測り知れないことが、容易に想像できるだろう。しかも、そういう情報伝達は、企業や団体があずかり知らないところで起きているかも知れない。これも従来のメディアにはなかったことである。

それなら、私たちは、SNSを敬遠せず、むしろ積極的に使って、顧客やファンに知らせたい情報を広めればいい!SNSを、ファンを増やし、繋がりを深めるために使えば良い―そう考えた企業、団体では、コミュニティー・マネジメントは急速に重要さを増し、コミュニティー・マネジャーという名を戴く職種が育ったのだ。

ただ、その育ち方を見ると、社会の仕組みや文化の違いがここでも影響を与えている。

国際化に多言語への対応は必要

ご存知のようにスイスは主に独仏伊語が併存する多言語国家だ。そういう社会では、ソーシャル・メディアという、技術的には同じプラットフォームを使っても、言語圏によりコミュニティーは分かれていると識者は指摘する。言語が違えば、考え方もコミュニケーションのありかたも違ってくる。そのため、スイス全体で活動する企業や団体には、それぞれの言語に対応したコミュニティー・マネジメントが必要になっているというのだ。

その点、日本は原則的に、言語が日本語だけなので、全国的な規模のコミュニティーを作ることができる。

だがここで、日本でも、スイスほどの規模ではないにせよ、言語の多様化が進行している現状に注目したい。例えば、「日本語人」でない人は数多く居住しているし、職場への進出も進んでいる。異なる言語を持つ人々と共に生きる社会で、コミュニティーを形成し、コミュニケーションを図る必要性は増える一方だ。日本の場合は、スイスのような明確な言語圏を国内に形成することはないと思うが、多様な言語を持つ社会の必要性に応えるコミュニティー・マネジメントを、今から意識して育てる必要があるのではないだろうか。それもまた、日本の国際化のプロセスと捉えたい。

掲載: NTTユニオン機関誌「あけぼの」2013年5月号

掲載稿はこちら→ 2013_あけぼの_ICT_第十六回