言葉は贈り物ー国際会議こぼれ話

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【今私がそれをいわなくても、と思ってませんか?伝えなければ伝わらないんです。】

その時、オバムさんは真っ黒い顔をくしゃくしゃにした。心から嬉しそうな表情、そこには安堵もまた混じっていた。

先週、私はある国連関係の国際会議に出ていた。日本代表団のために議事録を書くのが仕事だった。

オバムさんは、その議長を務めていた。

決して易々とは行かない数々の議題、一筋縄では行かない、会議のベテランたち。

四日間の会期中、オバムさんはいつも冷静で忍耐強く、謙虚で、どの人の意見も尊重しながらも、テキパキと議事を捌いていった。時にはユーモアを交えながら。

この人は素晴らしい!とおもった。

最終日、すべての討議項目を終え、会議が閉会したとき、私はオバムさんに感謝したかった。こういう会議の常で、最後に会場の参加者は議長の労をねぎらって拍手をした。だから、その拍手の中で私も議長に感謝していたんだけれど、それだけで終わらせたくなかった。私は、自分の気持ちを彼に伝えたかった。

会議が終わり、人々が退場しかけた頃、オバムさんは全ての仕事を終えて議長席から降りてきた。彼の廻りには誰もいなかった。

チャンス!

私は迷わず彼に近づいて行った。

「ミスター・オバム、あなたの素晴らしいチェアマンシップをお祝いさせてください。私は、かれこれ20年近くこの組織の会議に出ていますが、あなたはその中で私の出会った最も素晴らしい議長の一人です。」

その時だ、彼が顔をくしゃくしゃにしたのは。

彼のその顔を見た瞬間、「あ、言葉は贈り物なんだ!」と気づいた。

そしてまた、安堵が彼の顔に走ったのを見て思った。

彼に面と向かってその仕事ぶりを褒める人は、なかなかいないんだろうなと。

彼だって、自分が議長として良い仕事をしていたかどうか、会議に出ていた人の評価は気になるだろう。

思い切って、オバムさんにお礼を言いに行って良かった。

気持ちを伝えに行って良かった。

オバムさんは、私からの贈り物を受け取ってくれた。

表現して、良かった!

自分の気持ちは、伝えなければ伝わらないんだ!

ITU会議場
国際会議場, ITU(国際電気通信連合)

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ディジタルの世界で働く女性を、ソーシャルメディアで輝かせよう! ーー欧州ICT社会読み説き術 (27)

日本でもヨーロッパでも、ディジタル生活がすっかり浸透した割りには、ICTのかかわる場面で、女性の存在感は依然として薄い。大まかな数値だが、ICTをテーマにしたシンポジウムやコンファランスのスピーカのうち、女性は5%、ICT産業全体をみても、そこで働く女性は20%という。

その現状を変えたい、という思いを抱き、実行に移した女性がいる。ジュネーブでディジタルマーケターとして働く、タイサ・シャルリエさんだ。

シャルリエさんは、2014年1月に、「Women in Digital Switzerland」(ウーマン・イン・ディジタル・スイス、WDS)というグループを、リンクトインの中に立ち上げた。このグループは、最初は全く個人のプロジェクトだったので、同じマーケティング仲間の20数人の女性に、メールで知らせただけだった。それが、たった四週間で120人の参加者が集うグループに急成長した。宣伝しなくても、口コミだけでこれだけ集まったのである。

何故ディジタルビジネスで働く女性たちは、Women in Digital Switzerlandに強い関心を持つのか?そこにある思いとは?

今回は、女性という切り口から、ICT社会に迫ってみた。

Women in Digital Switzerlandグループポータル。リンクトインの中にある。左上の写真は創始者、シャルリエさん。
Women in Digital Switzerlandグループポータル。リンクトインの中にある。左上の写真は創始者、シャルリエさん。

女性の意見を社会に

タイサ・シャルリエさんは、明るくダイナミックな広報ウーマン。宮本武蔵の「五輪の書」をフランス語で読んだと言って、筆者を驚かせた。彼女は、ディジタルマーケティングを専門にしている。(註:ディジタルマーケティングとは、SNSなど、ディジタルメディアを使った、商品、サービス、ブランドの販売促進手法の総称。企業アカウントのフェースブックを使ったコミュニティーマネジメント、企業HPのブログの執筆など、態様は多岐に亘る。)

シャルリエさんが、自分の業界で女性の発言力を高めなければいけない、という問題意識を持った直接のきっかけは、高額な保育費用だった。彼女はシングルマザー。子どもを保育園に預けて働きに出ようとしたが、その費用に彼女の給料を殆ど持って行かれることを知った。「これでは、女性は外で働けない!女性の意見を社会にもっと出して行かなければ。」そこで、まず自分の仕事であるディジタルマーケティングの分野で働く女性同士を繋げようと考えた。(註、スイスの社会制度には、女性が常に家にいることを前提にして作られているものが散見される。高額な保育費用はその一例だ。保育は例外という考え方である。)

スイスでもICTを利用するビジネスのうち、ディジタルマーケティングに携わる女性の数は多い。コミュニティーマネジメントなど、在宅で働ける職種のあることはその大きな理由だ。家で働けるなら、育児をしながら仕事を続けられる。そういう女性たちを繋げる個人的な繋がりはあったが、個人の交遊の範囲を超えてより大勢を繋ぐ仕組み、それを可能にする場は無かった。

意見交換を通じ、働く女性が支え合う

スイス社会には、多国籍を認めるなど先進的な面もある反面、保守性も根強い。女性が働くことや、シングルマザーに批判的な意見を持つ人も多い。そういう目に晒されながら働く女性が、互いに支え合う仕組みを提供するWDSは、互いに孤立していた女性のニーズに見事に的中した。

WDSグループサイトには、さまざまな経験や意見、興味深いイベントなどが載せられるようになった。「読まれるブログを書くには?」「3月7日はスイス女性の給与“平等”の日」「女性リーダーが“いばらないリーダーシップ”を育てる方法」などである。

シャルリエさんは、「このように、経験やアイデアをシェアすることから始め、それが参加者同士を刺激し合う(インスパイア)ようになって欲しい。それが育って、女性たちが力づけ合い、自信を持つようになっていって欲しい」と思っている。そうして、「女性たちに自信を持って対外的に発言する力を身につけて欲しい」と。

WDSで使う言語は英語だ。シャルリエさんがフランス語圏のジュネーブで活動しているためもあり、今のところ参加者の多くはフランス語人である。けれども、広くスイス全体で言語の壁を超えて情報交換するために、彼女はあえて英語のサイトとした。英語はスイスの言語ではないが、必修とする学校が多いため、若手マーケターには英語を読み書きする人は多い。こうして彼女は、英語を介して、ドイツ語、イタリア語を母語とするスイスの女性たちにも、共感の輪を拡げようと思っている。

これは恩返し

参加メンバーは、今や250人に迫ろうとしているWSDだが(原稿執筆時点)、グループを大きくすることは、私の目的ではない、とシャルリエさんは言う。「多くの人々のおかげで、私は何人もの素晴らしい人々に出会ってきた。今度はWDSを通じて、女性たちが素晴らしい人々に出会う機会を提供したい。」彼女はまた、「女性の能力を活用することは、企業の社会責任(CSR)でもある。」とも言う。女性が能力を発揮するよう育てることは、社会への貢献でもある、と。

日本でも、ネットを活用して女性たちが連携し、互いを支援しあう仕組みが育っているようだ。例えば、最近筆者は、「営業部女子課」 (http://www.eigyobu-joshika.jp)というサイトを知り、頼もしく思った。ソーシャルメディアは、相談相手が身近にいない人々を繋げ、互いに学ぶ機会を提供できる。折しも安倍首相は、日本経済の成長に女性の能力は不可欠と言っている。ソーシャルメディアを利用したこのようなつながりは、これからも拡がって行くだろう。

掲載稿はこちら→ 欧州ICT社会 読み解き術 第二十七回、NTTユニオン機関誌「あけぼの」2014年6月号

ジュネーブと国際会議と(6)人見知りだった私が、国際会議で実行していること

私は、人見知りの子供でした。外に出て友達と遊ぶよりも、家で好きな絵を描いたり、本を読んだりしている方が好きな子どもでした。

幼稚園の頃は、「月曜病」だったそうです。月曜日の朝になると腹痛を訴えたと、母から聞きました。家で気ままに過ごした週末の後、幼稚園に行くのがいやだったのでしょう。

母も、欠席の連絡を受けた幼稚園の先生も、私の幼い病気に気付いていました。けれども、先生は無理強いせず、「ああ、よしこちゃん、またね。元気になったらいらっしゃい。」と言ってくださったそうです。

こういう人見知りの私ですが、おとなになると、そういう理解ある先生ばかりに囲まれて過ごすわけにはいきません。

ITUの会議に出席するようになって間もなく、気づいたことがあります。国際会議で必要なのは、発言の善し悪し(内容の正しさ、建設的な意見か、など)もさることながら、人としての信頼が同じくらい重要なのです。そのためには、日頃から、会議場の中と外で多様な人々と知り合い、信頼関係を築いておかなければなりません。

反面、会議に初めて参加した人の発言力は、どうしてもその実力以下になってしまわざるを得ません。これは、仕方ありませんね。それもまた、国際会議という意志決定過程のルールのうちなのです。だからこそ、ある人を何年間にも亘り同じ会議に出席させることは、それだけで大きな発言力を得るために大変役立ちます。

人見知りの人間が、国際会議で他の人と知り会って行くにはどうすればよいか?これは私にとって大きな課題でした。

ジュネーブ旧市街。石の壁に残るホタテ貝の印が、巡礼宿だった歴史を語る。
ジュネーブ旧市街。石の壁に残るホタテ貝の印が、巡礼宿だった歴史を語る。

いろいろな経験を繰り返した今、私は、どんな会議でも、セミナーなどでも、毎回自分に二つの宿題を出しています。

一つ目は、必ず、何か一言、発言すること。意見でも質問でもいいからとにかく、一回は声を出す。

二つ目は、毎回、知らない人最低3人と話しをする。

一つ目の宿題は、NTT時代の上司だった、Kさんを見習ったものです。この点については、6月号のこのコラムでお話ししましたね。

二つ目は、自分で作り出した宿題です。

どんな会合でも、毎回知らない人3人と話すこと。または、既に知っている人と、新しい話題で話すこと。

なぜそんなことをするかというと、人に話しかけることを楽しくしたいからです。逆に言うと、宿題を出しておかないと、人と知り合うことに一歩を踏み出せない人見知りの私が、まだ心のどこかにいるのです。

そういう自分をどうにかしようと思い、一人でこのようなゲームをすることを思いつきました。ゲームと思えば、軽い気持ちで実行に踏み切れます。それがこの二つの宿題なのです。

ゲームですから、一つ出来る毎に、自分にご褒美も出しています。一日の会議を終えた後、夕食前のビールなどは、励みになります。こうやって、自分に人参を与えるわけですね。

人と知り合うことに億劫さを感じる人は、どうも私だけではないようです。大人になると、人付き合いの面でも自分の領域がしっかりできてきます。その反面、 多くの人は、新しい人と知り合うことを面倒に思うようになるのではなでしょうか。

人に話しかけることを億劫に思わないコツは、相手への関心です。目の前にいる人に対し、どんなひとだろう?と興味を持つことです。人は誰でも、情報の宝庫です。相手の知っていることに興味を持ち、聴くことを楽しんで下さい。そうして、その人と知り合ったことを喜び、たとえ5分でも、一緒にいる時間を楽しみましょう。まして国際会議の場では、広く世界から、思いもかけなかった話題が集まって来るのですから。

最後に、私に一つ目のヒントを下さり、今も尊敬する先輩のKさんの詩を、ここにご紹介したいと思います。これは、「歳を取ったら」というシリーズの一作です。けれども、ここに込められたメッセージは、年齢に関係なく、誰にでも受け止めて頂けることと思います。

歳を取ったら

孤高を目指してはいけない

ネットワーカーになろう

様々な人との出会いが

人生を豊かにしてくれる

歳を取ったら

もらっているばかりではいけない

情報を発信しよう

ささやかな贈り物を

喜んでくれる人がきっといる

(上記の詩の引用に当たっては、作者、K様のご承諾を頂きました。)

この連載は、今回が最終回となります。皆さま、六ヶ月間ご愛読をありがとうございました。

国際会議でのコミュニケーションについて、講演や研修を致します。まず、メールでご相談下さい。

Yoshiko.Kurisaki@gmail.com

掲載: ITU ジャーナル Vol. 43, No. 9, 2013年9月号

国際会議一年生の教科書(2)発言は出だしが大事

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【これだけは身につけて、きっと役立ちます】

ぴーちゃん、この前は、私は発言する前にまず手元にメモを作り、要旨を書き出してから手を挙げる習慣を身につけたという話をしたよね。

私は20年ぐらいの間、国際機関、NGOなどでいろんな国際会議の経験を積んで来た。けれども、準備が大事だということは今も変わらないのよ。

きょうは発言のしかたについて話そうか。

発言のコツやはなしのまとめ方は、ひとりひとりの個性や経験により様々なもの。私がこれから話すことは、ひとつの例として聞いてね。

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発言は出だしが大事です。

出席者が10人に満たないような小規模の会議ならともかく、会議の規模が大きくなるほど、発言者の伝えたい細かなニュアンスは伝わらなくなるものです。日本語のコミュニケーションは、相手の気持ちを思いやる細やかなニュアンスに満ちているますが、国際会議の大きな会議場では残念ながら、それは伝わらないと思って下さい。

そもそもあなたの発言を聴く相手があなたと同じ文化を共有していないのです。言いたいことをハッキリ言わなくてもわかってくれる人は、ここには誰もいません。

その上英語は会議に出ている大多数の人にとって自分の母語ではないのです。

一度や二度の発言で細かいニュアンスまでわかって貰うことは諦めましょう。

国際会議を見ていると、言葉は平易で、発言内容の論理構成は単純な方が、発言の主旨は良く伝わることがわかります。英語を使い慣れていない人々にも分かり易い語彙で話す、発言の論理は、聴き手にフォローしやすく組み立てる、この二つを心がけると大勢の人々にあなたの意志が伝わりますね。

伝わることは、理解の第一歩です。

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国際会議開場の一コマ (世界電気通信連合, ITU、ジュネーブ)

ではどうやって?

発言を聴く相手の心構えを、最初に作ることです。例えば発言を始めるときに、よくこういう言い方をします;

「私は、○○について、三つの点を申しあげたいと思います。」

その応用形としてこういう言い方もできます;

「私は、○○について、一つの質問と、一つの意見(Observation)があります。」

つまり、このようなやり方で、聴き手に私のメッセージをフォローする道筋を作る、言い換えると、あなたの発言を聴く枠組みを最初に提供するのです。

もう一つ大事なことがあります。

ゆっくり話しましょう。

私は子どもの頃から早口でした。母には、「もっとゆっくり話しなさい」とよく言われました。こういうことは、自分では意識していないので、どうも困ります。けれども、会議の時は、早口は相手に理解されない結果を招くので、結局はあなたの損。ゆっくり話すことを心がけましょう。

国際会議の場では、誰でも緊張します。そこに英語の苦手感が加わると、人は早口になってしまいがちです。

どうぞ、リラックスして下さい。ゆっくり話して恥ずかしいことは何も無いのです。それどころか、あなたの発言が聴き易くなり、英語の苦手な多くの出席者には感謝されるでしょう

発言するのは、他の人に自分の意見を分かってもらうためです。賛成反対は、分かってもらった後のことです。

もう一度言います、発言は出だしが大事です。

発言の出だしを工夫すると、あなたの言いたいことが分かって貰えるようになります。すると、会議が面白くなります。

掲載: ITU ジャーナル Vol. 43, No. 5, 2013年5月

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