ダイバーシティから学ぶ方法とは?

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 【会話を通し、心を開いて学び合うダイナミズムに尽きます】

互いが対等な立場に立って、会話を通して学び合う場、そこに新しいアイデアと気づきが生まれます。

イノベーションもこういう環境で生まれて来るのです。

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6月のある日曜日、私はベルンで研修会の講師を務めました。

テーマは、「ケース学習」という学びの方法の紹介、受講生はスイス日本語教師の会の会員の方たちです。普段先生でいらっしゃる方たちがその日は生徒になり、私が先生の役割になったわけです。(我ながら大変なことになったと、、。汗)

ケース学習とは、実際のケースに基づいて書かれたストーリーを全員で読み、登場人物の気持ち、問題の本質を一つ一つ考え、解決方法をグループで話し合うというプロセスを通じて、文化の異なる人と仕事を進めるスキルを身につけていく学習の方法です。

このようにケース学習は問題解決のプロセスに大きな意味があるので、ケース学習の本を読んでもそのやり方や意義が身につかない、ハラ落ちするまでにはわからないことは簡単に想像できますよね。テニスの本を読むだけで、ラケットを手にしてボールを打たなければテニスの腕は上がらないのと一緒です。

そこで私は受講する皆さん全員にケース学習を実際に体験して貰いました。

ケースを元にしたディスカッションにもロールプレイにも、皆さんは熱心に取り組んでくださいました。会場いっぱいに、それぞれの登場人物になりきって気持ちを考える受講生の皆さんの生き生きと話し合う声が響いて、活気に満ちていました。

研修の終わりには、それぞれの方が多くの学びと気づきを得てくださったようです。最後のワークの後でホワイトボードに貼って頂いたポストイットにその思いが溢れ出るようでした。

こういうワークはひと思いに飛び込んで、脳みそに汗かきながらも楽しみながら取り組むのが、多くを学ぶコツです。

心を思い切って開くのです。

そこにドッとアイデアの元となる心と頭の栄養が流れ込んできます。その瞬間、思いもつかなかった閃きが生まれるのです。

そのダイナミズム!

これが会話のチカラ、場のチカラです。

こういう場では、お互いが先生です。つまり、参加者皆が教え会い、学び合うのです。同じケースを読んでいるのに感じ方、考え方の十人十色だということに気づき、驚く。その会話の中で、自分の脳が触発され、新しいことに気付いて行くプロセスそのものが学びになっているのです。

人は自分が考え抜いて得たことは決して忘れません。それどころか、会話を通じて考えを深める練習をしているようなものですから、次に別の問題にぶつかったときに考える用意が頭の中にできています。

一心に学ぶ気持ちに場所や年齢に関係がないという姿を目の前にした1日でもありました。

気持ちの良い夏の日曜日となりました。

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ベルンに行く列車の車窓に夏のスイスが広がります。

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締め切りの名はオリンピック

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【締め切りが近づくと底力が出る方、いらっしゃると思います。もしその締め切りがオリンピックだったら?】

締め切りがあるのはスポーツ選手だけではありません。

東京2020年に向けて、日本でも色々なプロジェクトが立ち上がっています。リニアモーターカー、都市内WiFiなど、多種多様。

オリンピックの運営に欠かせないのが情報通信技術 (Information and Communications Technology, ICT) システム。それを作り、運営する人々にもまた締め切りがあります。それも何年にも亘る複雑な仕事の相当にキビシイ締め切りが。技術者たちはそれをどうやって乗り越えて行くんでしょうか?

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2020年の東京オリンピック、パラリンピック大会で、情報通信技術 (Information and Communications Technology, ICT) は大きな役割を果すに違いない。数万人にのぼるボランティアのマネジメント、入場券の販売管理、大会や報道関係者用情報システムなど、すぐに思いつく用途を考えただけで、その複雑さ、規模の大きさに頭がクラクラしてくる。

 五輪競技大会に使われるICTは、具体的に言ってどこが特別なのか?経験の豊富なパトリック・ワッティオ氏(以下PW氏、写真)にお話しを伺った。

欧州ICT社会 第34回 オリンピック PW氏写真

 PW氏は、1988年に準備の始まった、アルベールビル(フランス)冬期オリンピック(1992年開催)のICTプロジェクトを皮切りに、約30年間、夏冬のオリンピック、パラリンピック会場で使われるICTシステムに関わり続けてきた。初めは、大会用ICTシステムの製作、運営を担当する会社のマネジャーとして、後には、国際オリンピック委員会(IOC)の技術ディレクターを務めた。そんな経歴を持つPW氏は、五輪競技会ICTの歴史の生き証人である。

五輪ICTは、息の長い、大規模プロジェクト

一回の五輪大会を組織運営する業務は7−8年の間続く。それは開催都市が決まった日から始まり、6年後の大会本番、そして大会終了後も8から9ヶ月の間、業務が続くからだ。ICTもまた同様である。

 ICTは技術革新が速い。当初の予定に変更を迫られることもある。また、担当者としては、限られた予算ではあっても、できるだけ最新技術を使いたい。ここは知恵を絞るところだ。

 五輪大会のために製作されるICTシステムの数は、主なものだけで200から300、ICTに係わる人々は大雑把に言って、3−4千人。ICTを含む、大会関係者の総数は、ボランティアも含め、約15万人という。

電気通信にも、五輪競技会ならではのニーズがある。

ICTプロジェクトには、大会限りの設備、システムと共に、その運用を支えるインフラの建設が必要となる。競技会場内のシステム運用のために、会場外ネットワークの建設も必要になるからだ。そのため、五輪競技大会には、インフラに投資する資力のある通信事業者が必要となる。そのため、ICTのうち、通信部門は、開催国の主要通信企業が担当することが多い。例えば、ロンドン大会のBTのように。

五輪競技大会は、新しい通信技術登場の機会でもある。2018年の冬期オリンピック会場、平昌(ピョンチャン、韓国)では、第五世代 (5G) システムが使われることになっているとか。

日程は絶対

五輪競技会用ICTは、利用目的が多様であることから(大会組織委員会用、競技用、ボランティア管理、会場用交通手段マネジメント、など)、それらに適した、通信、ITシステムからオーディオビジュアルまでを含む、幅広いICT技術が必要だ。その予算配分も、多様な費用負担主体、負担割合など、複雑を極める。しかも、ICTシステムは、開催都市、開催国ごとに異なる都市インフラに適応するよう構築しなければならない。同じ理由で、チケットの販売方法も大会ごとに異なるという。

 しかし、ICT総括責任者にとり、五輪競技会用ICTの最大の特徴は、開催日が決まっていて、その日程が決して動かないことだ。しかもその日は、そのICTの使われる五輪競技会開催日の8年以上前に決まる。世の中にはオリンピックよりももっと大規模で複雑なICTシステムがあるが、開催日が絶対という点は、五輪競技会用ICTプロジェクトだけにいえることだ。

決まった日までに完璧なシステムを作らねばならないという条件は、ICTのプロジェクトマネジメントやシステム構築の進行に大きな影響を与える。それはストレスでもあるが、良い点もある。会期が絶対である以上、何か問題が起きた場合、人々は解決策のためにひたすらエネルギーを集中するからだ。これは、職場の人間関係としては、健康なことだ。

日程が絶対なので、試験には最大限の慎重を期さなければならない。本番で失敗するわけにはいかない。そのため、試験の日程には、予期せぬ故障や、追加試験の必要性も考えて、充分な日程を見ておく。

ICTの変化

ICTに対するニーズも利用形態も大きく変化した。オンラインチケット販売に代表される外部システムとの接続が増加したことから、運用試験の必要なシステムの数が増えたこと、またモバイルニーズの急増に対応する必要が生じた。そのため、情報システムのセキュリティー対策も、カバーする範囲が拡大した。また、もともと個人用として開発されたスマホなどのICT端末(従ってセキュリティーレベルは低い)が業務用に使われるようになり、ネットワークインフラへのセキュリティー要求を高めたこと、会場内で報道関係者の撮影する写真やビデオのような、大容量データを高速で安全に送信する必要が、有線ネットワーク需要を飛躍的に高めていることも、大きな変化だ。

ICTの現場に要求されることは?

ICTは大きく変化しても、現場で働く人々の基本は変わらないとPW氏は語る。

「五輪競技会のICTは、長い長い、マラソンです。その上、大会が始まると、現場の運営に携わる者はタフでなければならない。ICTスタッフは、試合会場の開く3−4時間前からスタンバイします。仕事が終わるのは、試合終了後の更に1−2時間後です。」

「試合は生き物です。いつ何がおきるか、予測できないことばかり。ICTスタッフには、どういう事態にあっても、冷静沈着でいられることが要求されます。私には、会期中は殆ど睡眠時間がありません。」

 ICTという側面からオリンピック、パラリンピックにかかわって来た、PW氏。その彼が、30年の経験を振り返って言った言葉が重い。

オリンピックとは、最小にして最大の複雑なプロジェクトです。そこに係わる人々、組織(政府、企業、団体など)の利害調整は複雑を極めます。それがまた、オリンピックの成功を大きく左右します。」

来たる2020年の東京オリンピック、パラリンピック大会でも、多くの人々がICTに携わることだろう。その人々は、競技の裏側で何を見るだろうか?

ロンドン 五輪大会(2012年夏)のICT担当者たちが、そのノウハウ、経験を二冊の書物に纏めた。下記のサイトから無料で入手できます。

http://www.theiet.org/sectors/information-communications/ict-2012.cfm?origin=homepage

掲載稿はこちら→ 欧州ICT社会 読み解き術 第34回、NTTユニオン機関誌「あけぼの」 2015年3月号

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金曜の晩、お家からワールドカフェに参加しませんか?

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【お家からワールドカフェに参加しませんか?】

3月10日 金曜日、20:30-22:00pm

ワールドカフェを知っている人も、知らない人も、
オンラインで話し合ったことのある人もない人も。
皆いらしてください。
テーマはダイバーシティです。

こんなことがわかりますーーー
ーワールドカフェってこうするのか
ーオンラインで今まで知らなかった人と会話するって、こういうことなんだ
ーあ、操作はほとんど何もいらないんだ
ーダイバーシティてこうやって理解していけるんですね

自信がない?大丈夫。ビデオ会議を使ったことのない方には、カフェの開始前に簡単な講習会があります。

こんないい機会、見逃さないでくださいね。

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ベストプラクシス・カフェ#6

ダイバーシティの心を育てる
〜授業はワールド・カフェ〜

さまざまな意味での多様性を認め、それを受け入れることの大切さが広く認識されるようになりつつあります。
今回のベストスラクティス・カフェでは、NTT出身でジュネーブ在住の栗崎由子さんが、ご自身が体験して来たダイバーシティと、その心を伝えるために行ったワールド・カフェについてストーリーテリングしてくださいます。栗崎さんは、長年ヨーロッパの国際機関やグローバル企業で勤務してダイバーシティの真っ只中に身を置いて来た方です。栗崎さんのお話をうかがつてから、ダイバーシティをテーマにしたワールド・カフェの効果的な進め方について話し合います。

「ベストプラクティス・カフェ」は、ウェッブ会議システムを活用したオンラインでのワールド・カフェです。インターネット回線を介して自宅やオフィスからZoom Video Conferenceにアクセスすることで気軽にご参加いただけます。お申し込みいただいた方に、ウェブ会議室にアクセスするためのURLをご連絡します。


⑴ 日時:2017年3月10日 20:30-22:00pm(日本時間)
⑵ 場所:ウェッブ会議システム"Zoom Video Conference"上のバーチャル
     会議室
⑵ テーマ:ダイバーシティの心を育てる〜授業はワールド・カフェ〜       
⑶  ゲストスピーカー:栗崎由子さん
⑸ ワールド・カフェ ホスト:香取一昭(マインドエコー)
⑹ 参加費:無料
⑺ 参加申し込み方法:次の情報を添えてtwc.evening@gmail.com にメール
           で参加申し込み願います。
     ① お名前、ふりがな
     ② eメールアドレス
     ③ 携帯電話番号(必須)
     ④ ワールド・カフェ参加経験:あり、なし
     ⑤ Zoom video conference 参加経験:あり、なし

参加申し込みをされた方には参加するためのURLをご連絡します。
なお、当日はヘッドセットとラップトップについたビデオカメラをご準備ください。

フェースブックのイベントページはこちらです

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ヨーロッパ・ジャパン ダイナミクスはダイバーシティ研修を企画、実施致します。–> こちらをご覧ください。

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イノベーションに女性の参加は欠かせない

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社会のダイバーシティはイノベーションに不可欠だということは広く知られている。現に、外国人の人口比率が約20%を占めるなど、ダイバーシティ豊かなスイスは、世界一のイノベーション大国でもある。

そのダイバーシティの大きな要素として、ジェンダーを見落としてはならない。ところが、スイスでもこの点にはまだまだ改善の余地があるという。科学技術分野の仕事や組織の意志決定には、女性の参加率は低いというのだ。筆者は、その情況を改善するために自身の職場で、また経営におけるジェンダーバランスのコンサルを行なっている二人の女性と知り合った。ジェンダーとイノベーションはどう繋がるのか?このテーマは、わかるようでなかなか分かりにくい。

早速このお二人にお話しを伺った。

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アンドレア・ダンバーさん

二人の専門家

取材に応じてくれたのは、イノベーション支援の実務に携わるアンドレア・ダンバーさん(写真1)と、ダイバーシティラボというNGOを主宰するジョイス・ビンダ-さんだ(写真2)。

ダンバーさんはアメリカ生まれ、光学で博士号を取った後、研究を続けるために、イノベーションを次々に生み出すことで世界的に有名なスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)に来た。今は専門を生かし、ヌシャテル州政府の産業政策の一環として、CSEMという会社でベンチャー企業に技術移転の支援を行っている。

ビンダ-さんは、ブラジル生まれ、ベルギーとイギリスで仕事をした後、スイスに移住した。英国在住中にジェンダー研究で修士号を取った経歴を生かし、スイスでダイバーシティラボというNGOを設立、今では組織活性化のためにジェンダーバランスを生かす経営のコンサルや、啓蒙活動を行っている (ビンダーさんのウェブサイト<英語>はこちらです)。

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ジョイス・ビンダーさん

女性の参加がイノベーションを促すのはなぜ?

栗崎 なぜ、女性の参加がイノベーションに必須なのですか?

アンドレア・ダンバー 理由は二つあります。

一つ目は、イノベーションは何かの境目を越えたところに生まれるからです。ジェンダー、文化、専門分野などの違う人々が集まり、それぞれなりの視点や、発想を交換し合うことから、人は物事を新しい側面から見ることに気づくのです。

二つめは、イノベーションの成果が誰にも享受できるものでなければならないからです。女性は人類の半分を占めるのですから、利益享受者としてもイノベーションを生み出す過程への女性の参加は不可欠です。

ジョイス・ビンダ- イノベーションは、異質な人々の集まるところで生まれます。性であれ、文化であれ、色々な人が社会には必要です。ものの見方、考え方の違う人々が集まり、共通の目標に向かって行動を起こすとき、そこに異質な存在との対話が生まれます。その過程で、互いに対する偏見や思い込みが外れていき、イノベーションが生まれるのです。

栗崎 何故イノベーションに関わる女性は少数なのでしょうか?

ダンバー これは欧州全体にいえることですが、採用や、昇進の決定権のある管理職の大半は男性です。彼らは女性よりも男性と働く方が容易だと思うようです。企業の役員に女性が3人以上いる場合、その企業の業績は平均よりも高いという調査結果があるのですが、採用や昇進の現状はなかなか変わらないでいます。ジェンダーはイノベーションを生むエンジンなのですが。

栗崎 スイスのイノベーションに女性は大勢参加していますか?

ダンバー 現状では、残念ながら女性の参加はまだまだ不足しています。博士号を取るまでは男女平等なのですが、企業の中では平等ではありません。意志決定に参加する女性は大変少数です。

ただ、希望はあります。米国と違い欧州では、専門職でも80%の時間だけ働くなど、パートタイムの働き方ができます。出産、育児期の女性はこのような制度を利用して働き続けられるので、女性管理職者の数はゆっくりではあれ、増えています。

栗崎 女性をもっとイノベーションに参加させるには、どんな解決法がありますか?

ダンバー 女性をあるレベル以上の責任あるポストに就けることには(経営者の)精神的なブロックが大きいのです。それを減らし、取り除くためには、マネジャーが実際に女性と仕事をする経験を積む必要があります。

各社の男女平等指数を測定し、合格点を取った企業に認証を与えるなど、男女平等の推進施策が必要ですね。

私は技術移転で企業に助言をする立場にあるのですが、担当する企業のプロジェクトに必要な人材の採用ニーズが出てきた場合は、いつも女性を推薦しています。

ビンダ- スイスにも女性管理職者の数の増えている企業があります。それらに共通している点は、社員のダイバーシティ増加が組織のために不可欠である状態だということと、社長が強力に推進していることです。ある会社などは、人事部の反対を社長が押し切りました。

栗崎 ダイバーシティからどうやってイノベーションは生まれるのでしょう?

ビンダ- カギは二つです。異なる考え方を持つ人どうしがふれあうこと。そして、その異質なアイデアを、自分の価値判断無しに受け入れる開かれた心です。そういう人々の頭に、斬新なアイデアは閃きます。これがイノベーションです。イノベーションはモノの形を取らないことも多くあります。反対に、ステレオタイプの目で物を見ることは、イノベーションの敵です。そこで思考が停止するからです。

取材を終えて

お二人のお話しを伺って、筆者は日本社会を考えた。欧州に比べると今でも日本は大変な同質社会だが、それを乗り越えるためには、日本で常識と思われていることに囚われないで物事を見る練習を日々心がけると良いかも知れない。こういう訓練は日本のイノベーション力復活に役立つに違いない。

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SNS時代のイノベーション? ー 欧州ICT社会読み説き術 (10)

フェースブック、ツイッターなどの、ソーシャルネットワーキングシステム(SNS)の利用者が、爆発的に増えている。私も遅ればせながら、2011年3月11日の東日本大震災を機に、ツイッターの効用に開眼。それ以来、ツイッターを通じて色々な人々と緩い繋がり(らしきもの)ができてきて、時々情報や意見を交換するようになった。

SNSの強みの一つは、人の繋がりの連鎖を速く、広く可能にし、自分が思いもかけなかったことを発見できることだと思う。私たち一人一人は、必ず何かを持っている。例えば、友人・知人という人脈、何かに対する意見、知識、経験など。それは資源(リソース)である。大勢の人が、ひとりひとり、そういうリソースを出し合うと、1+1を2以上の価値にすることができる。丁度ブレーンストーミングで、新たなアイデアを生み出すように。SNSはブレーンストーミングではないが、両者は、多数の人がリソースを出し合い、新しいアイデアを生み出す可能性のある仕組みという点で、似ている。

スマホが人の行く先を予告?

そんなことを考えていた折、「人の次の行く先を予告するスマホ」が開発されたというニュースが目に飛び込んできた。生み出したのは、ローザンヌ工科大学(スイス)の3人の研究グループである。それは、モバイル データ チャレンジ(Mobile Data Challenge, MDC)という研究開発のコンテストをきっかけに誕生した。

人がこのシステムを搭載したスマホを持つと、その人が次にどこに行くか、高精度で予告できるという。いろいろな目的に役立ちそうである。

広く世界にアイデアを募るノキア

そのアイデアを生み出したMDCという仕組みは、大変興味深い。MDCは、携帯電話機製造メーカとして有名なノキア社(本社ヘルシンキ、フィンランド)の、ローザンヌにある研究センター(Nokia Research Center, NRC)と、イダップ(Idap)という、人間とメディアのコンピュータ解析を専門にする研究機関(スイス)が主催している。

MDC の目的は、スマホに搭載された技術を使い、モバイル通信を人と社会に一層役立たせるシステムを生み出すことだ。ご存知の読者も多いと思うが、スマホには、全地球測位システム( Global Positioning System, GPS) ブルートゥース, 加速度センサ(accelerometer), マイクロフォンやカメラ などが組み込まれている。それらを縦横に使いこなして人の行動への理解を深める。その知識をもと人類共通の財産になるようなシステムを生みだそうという、壮大な夢のあるプログラムだ。

MDC はノキア社の R&Dの仕組みの一つである。同社は、「オープン イノベーション ネットワーク」という思想の元に、世界12箇所にNRCを置いている。 設置場所は、スイスを含む欧米先進国のほか、中国(二箇所)、インド、ケニヤなど、経済発展の目覚しい地域にもある。スタッフは500人。(出典:NRCウェブサイト)

ノキアのR&Dシステム

NRCは、ノキア社のR&Dの推進機関である。各NRCは、所在する国の理工科系学部を持つ大学と密接に提携し、R&Dを進めている。例えばスイスでは、NRCはローザンヌとチューリヒの工科大学と合同で研究開発を行なっている。つまり、オープン イノベーション ネットワークとは、ノキア社と研究機関(大学)との間でリソースを相互利用し、そこから相乗効果を生み出すしくみといえる。ノキア社が、テーマと、資金、必要な実験フィールドを提供するというのだ、これは、世界各地の若い研究者に強い動機を与えるだろう。ノキア社はこのような仕組みを通じ、次々にイノベーションを起こし、それを通じて科学の進歩、モバイル利用者の便宜に貢献し、ひいては会社の利益ともなることを目指しているかのようだ。

このような、広くアイデアとスキルを募る仕組みは、ノキア社のアプリケーション開発にも見られる。同社は「ノキア デベロッパー」という仕組みを提供している。それを通じてノキア社技術陣は、世界中のデベロッパーをサポートし、多様なアプリケーションの誕生を助けている。

ノキアの社風

なぜノキア社は、このような、仕組みを確立させたのだろうか?フィンランドは、教育程度も高く人的資源はあるものの、人口が少なく(約530万人)、国土の大半は寒冷気候に覆われている。天然資源にも恵まれていない。そういう国で成長した企業だからこそ、R&Dでも、自国に閉じず、国外に広く人材やアイデアを求め、協力し合うという考え方が身についているのではないだろうか。

また、ノキア社には、社会貢献の伝統がある。ノキア社が創業された時代には、若い人々に奨学金を出していたと聞く。

こういった仕組みから誕生したシステムやアプリケーションが、ビジネスですぐに収入になるかどうかは、別の問題かも知れない。そこから利益を上げるためには、アイデアだけでなく、コストや販売チャネルなど、他の多くの要素を考慮に入れなければならないからだ。

けれども、長い目で見ると、このようなR&Dの仕組みは、人類に貢献するのではないだろうか。R&D参加の門戸を広く開け、知恵とアイデアを大勢から集めるという目標を与えることにより、人材を育てているからだ。それはまた、りっぱな企業の社会貢献となっている。

筆者は、欧州の経済紙に、ノキア社の経営状態を懸念する論調が時折報道されていることも知っている。

が、どうしてどうして。この開けた態度は、組織の強さを示しているのではないだろうか。自分とは異質なものを取り入れる、それを受け入れて自らを変化させていくちから、それは時代の変化を生き抜く強さだ。

掲載: NTTユニオン機関誌「あけぼの」2012年10月号

掲載原稿はこちら。