イノベーションに女性の参加は欠かせない

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社会のダイバーシティはイノベーションに不可欠だということは広く知られている。現に、外国人の人口比率が約20%を占めるなど、ダイバーシティ豊かなスイスは、世界一のイノベーション大国でもある。

そのダイバーシティの大きな要素として、ジェンダーを見落としてはならない。ところが、スイスでもこの点にはまだまだ改善の余地があるという。科学技術分野の仕事や組織の意志決定には、女性の参加率は低いというのだ。筆者は、その情況を改善するために自身の職場で、また経営におけるジェンダーバランスのコンサルを行なっている二人の女性と知り合った。ジェンダーとイノベーションはどう繋がるのか?このテーマは、わかるようでなかなか分かりにくい。

早速このお二人にお話しを伺った。

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アンドレア・ダンバーさん

二人の専門家

取材に応じてくれたのは、イノベーション支援の実務に携わるアンドレア・ダンバーさん(写真1)と、ダイバーシティラボというNGOを主宰するジョイス・ビンダ-さんだ(写真2)。

ダンバーさんはアメリカ生まれ、光学で博士号を取った後、研究を続けるために、イノベーションを次々に生み出すことで世界的に有名なスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)に来た。今は専門を生かし、ヌシャテル州政府の産業政策の一環として、CSEMという会社でベンチャー企業に技術移転の支援を行っている。

ビンダ-さんは、ブラジル生まれ、ベルギーとイギリスで仕事をした後、スイスに移住した。英国在住中にジェンダー研究で修士号を取った経歴を生かし、スイスでダイバーシティラボというNGOを設立、今では組織活性化のためにジェンダーバランスを生かす経営のコンサルや、啓蒙活動を行っている (ビンダーさんのウェブサイト<英語>はこちらです)。

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ジョイス・ビンダーさん

女性の参加がイノベーションを促すのはなぜ?

栗崎 なぜ、女性の参加がイノベーションに必須なのですか?

アンドレア・ダンバー 理由は二つあります。

一つ目は、イノベーションは何かの境目を越えたところに生まれるからです。ジェンダー、文化、専門分野などの違う人々が集まり、それぞれなりの視点や、発想を交換し合うことから、人は物事を新しい側面から見ることに気づくのです。

二つめは、イノベーションの成果が誰にも享受できるものでなければならないからです。女性は人類の半分を占めるのですから、利益享受者としてもイノベーションを生み出す過程への女性の参加は不可欠です。

ジョイス・ビンダ- イノベーションは、異質な人々の集まるところで生まれます。性であれ、文化であれ、色々な人が社会には必要です。ものの見方、考え方の違う人々が集まり、共通の目標に向かって行動を起こすとき、そこに異質な存在との対話が生まれます。その過程で、互いに対する偏見や思い込みが外れていき、イノベーションが生まれるのです。

栗崎 何故イノベーションに関わる女性は少数なのでしょうか?

ダンバー これは欧州全体にいえることですが、採用や、昇進の決定権のある管理職の大半は男性です。彼らは女性よりも男性と働く方が容易だと思うようです。企業の役員に女性が3人以上いる場合、その企業の業績は平均よりも高いという調査結果があるのですが、採用や昇進の現状はなかなか変わらないでいます。ジェンダーはイノベーションを生むエンジンなのですが。

栗崎 スイスのイノベーションに女性は大勢参加していますか?

ダンバー 現状では、残念ながら女性の参加はまだまだ不足しています。博士号を取るまでは男女平等なのですが、企業の中では平等ではありません。意志決定に参加する女性は大変少数です。

ただ、希望はあります。米国と違い欧州では、専門職でも80%の時間だけ働くなど、パートタイムの働き方ができます。出産、育児期の女性はこのような制度を利用して働き続けられるので、女性管理職者の数はゆっくりではあれ、増えています。

栗崎 女性をもっとイノベーションに参加させるには、どんな解決法がありますか?

ダンバー 女性をあるレベル以上の責任あるポストに就けることには(経営者の)精神的なブロックが大きいのです。それを減らし、取り除くためには、マネジャーが実際に女性と仕事をする経験を積む必要があります。

各社の男女平等指数を測定し、合格点を取った企業に認証を与えるなど、男女平等の推進施策が必要ですね。

私は技術移転で企業に助言をする立場にあるのですが、担当する企業のプロジェクトに必要な人材の採用ニーズが出てきた場合は、いつも女性を推薦しています。

ビンダ- スイスにも女性管理職者の数の増えている企業があります。それらに共通している点は、社員のダイバーシティ増加が組織のために不可欠である状態だということと、社長が強力に推進していることです。ある会社などは、人事部の反対を社長が押し切りました。

栗崎 ダイバーシティからどうやってイノベーションは生まれるのでしょう?

ビンダ- カギは二つです。異なる考え方を持つ人どうしがふれあうこと。そして、その異質なアイデアを、自分の価値判断無しに受け入れる開かれた心です。そういう人々の頭に、斬新なアイデアは閃きます。これがイノベーションです。イノベーションはモノの形を取らないことも多くあります。反対に、ステレオタイプの目で物を見ることは、イノベーションの敵です。そこで思考が停止するからです。

取材を終えて

お二人のお話しを伺って、筆者は日本社会を考えた。欧州に比べると今でも日本は大変な同質社会だが、それを乗り越えるためには、日本で常識と思われていることに囚われないで物事を見る練習を日々心がけると良いかも知れない。こういう訓練は日本のイノベーション力復活に役立つに違いない。

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仕事でオンラインシステムを使うコツーー私なりの物語

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 最近急にスカイプやZoomといった様々なオンラインシステムを使って仕事を進める機会が増えました。今では欧州や北米では既に、コーチングのような人の心に関わるデリケートな仕事も頻繁にオンラインで行われています。

欧州でビジネスをしている中で、電話会議から始まって試行錯誤しながらたどり着いた私なりの使い方のコツをお伝えします。住む場所にかかわらず、家で仕事をされる方には特に知っておくと便利なコツなので、ぜひ読んでみてください。

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online-meeting

ジュネーブに住む私にとって、日本の人々はもちろん、欧州や北米の人々と仕事を進めるために、スカイプやZoom, Webinarのような手軽に使えるオンラインシステムは必須だ。

ただ、オンラインは対面のコミュニケーションとは違うため、使い方にコツがある。特に、ワールドカフェのようにグループディスカッションを行う場合はなおさらだ。

10月17日、私はIAFジャパンの主催した、ハイブリッド・ワールドカフェにジュネーブから参加する機会があった。これはZOOMというシステムを使い、東京を本会場にして、アジアや北米、欧州からの参加者を繋ぐ、意欲的な試みだ。対面とオンラインの両方を用いてワールドカフェを行おうというのである。

(“ワールドカフェ・アジア パート2 グローバル・コラボレーションの新たな可能性”。詳細はFacebook のイベントページを参照; https://www.facebook.com/events/1269917323029515/

私もその時に「私なりの物語」と題してオンラインで仕事を進めるコツをプレゼンしたのでここにまとめておこう。

☆ オンラインを仕事に使うコツーー「私なりの物語」

1.背景 私のオンラインシステムのつきあい

  • 私は以前、世界230カ国に拡がる世界規模の企業に勤務していたため、電話会議は仕事に欠かせなかった。その後技術の発展につれてWebinar,  テレビ会議なども使ったが、合計するとこのような遠隔コミュニケーションシステムを20年以上使っている。
    • 全てが国際会議だった。
    • プロジェクトマネジメントなど、会議を頻繁に行う必要のある時には特に便利だった。
  • フリーになった今も多用している。今はスカイプを多用している。Webinarも時々使う。

2.私の学び

  • コツは、心の距離の克服だと思う。
    • 直接に顔を見ないため、互いに得られる情報が少ない。そのため感情が伝わりにくい。
    • 背後事情も伝わりにくい。
    • ネット(電話)を切ったら、すぐに元の日常に戻る。会議中には参加者相互間にそれなりの熱意が生まれるものだが、オンライン会議ではそれが持続しない。
    • スカイプでもカメラを使用する方がコミュニケーションは快適だ。
  • 多すぎる機能は不要だ。例えば、企業用として毎回パスワードを変える機能のある電話会議がある。これは設定が煩雑になるだけで、実際には不要な機能だ。
  • 国際会議の場合、電話会議は手軽な反面、料金が高いことが問題。今はネットを使うのでその問題はほぼ克服できたのではないだろうか。

3.私なりの解決策

  • 以前、欧州、北米の同僚たちのリーダーとしてあるプロジェクトマネジメントのリーダーを務めた。私は特に問題の無いときも、定期的に(週一回)ミーティングを行なった。
    • 人が集まると、なにかしら話すべきことは出てくる。それが大事だと思う。自分はこのチームに属しているという感覚を維持できるのだ。
    • ところが、プロジェクトリーダーが私の後任者に変わり、彼の提案で何か案件のあるときだけ電話会議をしよう、ということになった。あっというまにその仮想チームは消滅した。
  • オンラインコミュニケーションには、人としての感情を込めることを、限られた手段だからこそ大いに留意しなければならない。嬉しいことに、このような感情を込めたコミュニケーションは日本人の得意分野ではないだろうか?
  • Webinarは仕事の打ち合わせに便利だ。顔と資料が両方見られる。リアルタイムで資料の修正もできる。

4.べからず集

  • オンライン会議中にキーボードを打つべからず。マイクが音を拾って耳障りだ。
  • 時差に注意すべし。技術に時間はなくても、人は時間から逃れられない。以前、時差の都合で夜中の2時にワールドカフェ参加の経験あり。ところが頭が働かない。これでは折角のワールドカフェも意味がない。

☆ ハイブリッド・ワールドカフェについて オンライン参加者としての感想

  • ジュネーブの自宅から日本の人々と話せたのは良かった。ワールドカフェで同じグループになった人の中には久しぶりにネット上で再会した日本の友人もいた。
  • プレゼンを聴いている間は結構退屈なものである。発表しておられる方には申し訳ないのだが、この退屈さはどんなに面白い発表であっても逃れられないのではないか?というのは、オンライン参加だとリアルの会場と違って目のやり場がない。スクリーンを睨むほか無い。こういう状態は退屈なものなのだと知った。これはなんとかして解決すべき問題だと思う。
  • 今回私は一人で日英語の両方でプレゼンを行ない、議論も行なった。これは相当に頭の負担が大きい。第一プレゼンしながら考える余裕がない。たとえ複数の言葉を話せる参加者であっても、外国語が混じるときには通訳をつける必要があると思う。
  • 最初の二つのプレゼンが終わった後コーヒーブレークがあったが、これはホッとした。気が抜けて良かった。オンラインでもブレークの時間は必用だ。
  • オフライン会場の人々にはイベントの後懇親会があったが、オンライン参加者にはない。オンライン参加とは孤独なものである。

☆ オンラインを使いこなすコツをテーマに最近幾つかの記事を執筆しました。もっと深く知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

20年かかってわかった国際社会で生きるための力とは? –欧州の経験から

 私もお人好しの日本人だった。

「なぜもっと早く昇進したいと言いに来なかったの?会社は今年は減収なので、全社的に昇進を止めているの。」

上司からそう言われた時、それは、自分がこの期に及んでもどれだけお人好しの日本人なのか、後悔と痛みを伴って分かった瞬間だった。私がヨーロッパで仕事を始めてから20年以上が経っていた。

ここで私の経歴について、少しお話ししよう。

私は生まれも育ちも日本である。日本ではNTTに約10年間勤務した。その後、1989年に経済協力開発機構(OECD)にポストを得、東京からパリに移った。当時OECDの日本人職員の大半は官庁からの出向だったが、私は公募だった。

以来四半世紀以上の間、いろいろな山坂を超えながら、私は欧州大陸で仕事をしてきた。OECDの後、多国籍企業に転職し、国際関係担当マネジャーとして世界各地で開かれる会議に出席した時期もあれば、終身雇用の無い外国のこと、失業して不安な日々を過ごしたこともあった。

振りかえると私は、仕事でも私生活でも、一個人として欧州とヨツに組んできたのだ。日本の組織の一員としてでなく。

現在日本には、国際社会で仕事をしたいと思われる方や、そのような人材を育成する方々が大勢おられる。そのような方々に、私の経験とそこから身につけてきた「グローバル力」ともいうべき力とは何かをお話しし、御参考にしていただければと思う。

写真1 モンブラン橋、ジュネーブ
モンブラン橋、ジュネーブ(撮影 筆者)

冒頭のエピソードに話しを戻そう。

この経験は、ジュネーブに本社を置く、ある多国籍企業に勤務して10年以上経った時のことである。

私は本当にお人好しだった。もともと日本を出たのは自分の意志である。それ以来、国際機関や多国籍企業で100を優に越える国籍の人々と仕事をしてきたというのに、私は芯から日本人だったのだ。「良い仕事をしていれば、きっと誰かが見ていてくれる、そういう私に報いてくれる」、私は無意識のうちにそう思っていたに違いない。それは日本人なら大半の人が思うことでもあるだろう。

頭では分かっていた。国際機関でも、その後に移った多国籍企業でも、定期的な人事異動や昇進、定期昇給などは無かった。昇進も昇給も、自分から仕掛けていかなければならない。「自分はABCの仕事を手がけ、XYZという成果を出した。だから、昇進させて欲しい、昇給すべきだ。」そのように言って、上司と話し合わなければならない。そういう議論をすることは、上司との交渉でもなければ、ましてや攻撃ではない。当たり前の話し合いなのだ。

私にはそれができなかった。昇進していく同僚たちを身近に見ていたのに、自分の昇進を自分から上司に話しに行こうという発想さえ、私にはなかった。良い仕事をしていれば、きっと昇進が向こうからやってくると思っていたのだ。

思い込みに気づく必要

日本の常識は、外国での常識ではない。頭では誰もがそう分かっている。ところが、現実にはいつのまにか、誰もが自分に染みついた価値観の通り行動してしまっている。ここに異文化社会で生きる際の落とし穴がある。

日本人だけではない。人は誰もが何らかの文化的背景、価値観を持って生きている。そのため、文化の違う社会で生きる人間はどうしても、多かれ少なかれ同様の落とし穴を経験するものだ。

ただ、日本人だからこそ充分に注意し、少なくとも自分にはそういう落とし穴があるとあらかじめ覚悟しておくことは役に立つ。日本人のモノの考え方は、世界の中でも相当にユニークだからだ。そう思っておけば、外国で、または外国人と仕事をする中で「何かおかしいな?」ということに出会ったとき、なぜ自分はそう感じるのか、一歩下がって考える余裕が生まれる。それは自分が無意識のうちに思い込んでいる常識に照らして「ヘンだな」と思わせるのか、それとも別の原因があるのか、考えるきっかけになる。その点を意識するとしないとでは、異文化社会に適応する上で、大きな違いが出てくる。

 身につけるべきグローバル力

国際社会とは、外国に行って仕事する場合だけではない。国内で仕事をしていても、上司や部下、同僚に外国人、つまり自分と文化を異にする人々が登場するようになった。日本国内にも、国際社会が育ちつつあるのだ。

そういう時代に生きる皆様には、「グローバル力」を身につけていただきたいと思う。「グローバル力」とは、国際社会で普通に起きること、国際社会で仕事を進める上で基本になっている事柄である。

1.自分の意見を持つ力

他の人に言われたことや暗黙のルールを鵜呑みにせず、自分はどう考えるのか、一度自分の中に引き取って考え直す力。

2.自分の考えを主張する力

これがサラリとできるようになったら、しめたもの。

3.相手に、率直に質問する力

日本の外には、あうんの呼吸で通じるものは何もないと思ってよい。だからこそ、わからないことを質問する権利があなたにはある。質問は他者への攻撃ではなく、「あなたの話に関心を持っている」というサイン、一種の敬意でもあるのだ。

4.違う意見を持つ人と、建設的な対話をする力

異なる意見を持つ相手の、意見と人格とを混同せず、意見は意見として聴くこと。そうして、自分の意見も勘案し、課題のより良い解法を提案する力。

5.人を個人として見る力

国際社会では、自分の想像を絶するような意見の持ち主、文化的背景の持ち主に大勢出会う。そういう人々と建設的に仕事を進めるためには、相手を個人として捉えるよう心がけることが大事だ。相手に国籍、性別、宗教などのレッテルを貼ると、相手の意見を汲み取り損ねて、自分が損をする。

上記に挙げた「グローバル力」は、練習によってかなりの程度身につけることができる。また、日本国内でも実行できるものが多い。

「グローバル力」を身につけるためには、他流試合を繰り返すことだ。例えば、自主的に社外の人々との勉強会に行くなどである。その際、どんな集まりでも、最低3人の知らない人と話をすることをマイルールにすると良い。

小さな成功を積み重ねて行こう。それはきっと、国際ビジネスに生きる。

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新しいことを実行に移すとき、失敗はつきものだ。何かにチャレンジした結果の失敗を喜ぼう。失敗は学びの資源だからだ。そういう楽観性もまた、国際社会を生きる力だ。その力を育てるのは、未体験ゾーンに飛び込む勇気と、それを楽しむ好奇心だ。私はそのようなマインドセットをもつ日本人が増えることを期待している。

 

この原稿は、「PLAZA グローバル経営」、グローバル経営 2016年4月号、PP28-29、に掲載されたものを、編集部のご許可を得てこちらに転載しています。

掲載稿はこちら→ 2016_04_PLAZA

真の国際人の武器は言葉以前に好奇心という資質

グローバル・マネジャーという、国際人材養成を手がける会社の発行する、ウェブマガジンがあります。その最新号に、船川淳志さま(グローバル・インパクト代表)と私の対談記事が掲載されました。もしよろしかったら、どうぞ御笑覧くださいませ。
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国際会議一年生の教科書(2)発言は出だしが大事

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【これだけは身につけて、きっと役立ちます】

ぴーちゃん、この前は、私は発言する前にまず手元にメモを作り、要旨を書き出してから手を挙げる習慣を身につけたという話をしたよね。

私は20年ぐらいの間、国際機関、NGOなどでいろんな国際会議の経験を積んで来た。けれども、準備が大事だということは今も変わらないのよ。

きょうは発言のしかたについて話そうか。

発言のコツやはなしのまとめ方は、ひとりひとりの個性や経験により様々なもの。私がこれから話すことは、ひとつの例として聞いてね。

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発言は出だしが大事です。

出席者が10人に満たないような小規模の会議ならともかく、会議の規模が大きくなるほど、発言者の伝えたい細かなニュアンスは伝わらなくなるものです。日本語のコミュニケーションは、相手の気持ちを思いやる細やかなニュアンスに満ちているますが、国際会議の大きな会議場では残念ながら、それは伝わらないと思って下さい。

そもそもあなたの発言を聴く相手があなたと同じ文化を共有していないのです。言いたいことをハッキリ言わなくてもわかってくれる人は、ここには誰もいません。

その上英語は会議に出ている大多数の人にとって自分の母語ではないのです。

一度や二度の発言で細かいニュアンスまでわかって貰うことは諦めましょう。

国際会議を見ていると、言葉は平易で、発言内容の論理構成は単純な方が、発言の主旨は良く伝わることがわかります。英語を使い慣れていない人々にも分かり易い語彙で話す、発言の論理は、聴き手にフォローしやすく組み立てる、この二つを心がけると大勢の人々にあなたの意志が伝わりますね。

伝わることは、理解の第一歩です。

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国際会議開場の一コマ (世界電気通信連合, ITU、ジュネーブ)

ではどうやって?

発言を聴く相手の心構えを、最初に作ることです。例えば発言を始めるときに、よくこういう言い方をします;

「私は、○○について、三つの点を申しあげたいと思います。」

その応用形としてこういう言い方もできます;

「私は、○○について、一つの質問と、一つの意見(Observation)があります。」

つまり、このようなやり方で、聴き手に私のメッセージをフォローする道筋を作る、言い換えると、あなたの発言を聴く枠組みを最初に提供するのです。

もう一つ大事なことがあります。

ゆっくり話しましょう。

私は子どもの頃から早口でした。母には、「もっとゆっくり話しなさい」とよく言われました。こういうことは、自分では意識していないので、どうも困ります。けれども、会議の時は、早口は相手に理解されない結果を招くので、結局はあなたの損。ゆっくり話すことを心がけましょう。

国際会議の場では、誰でも緊張します。そこに英語の苦手感が加わると、人は早口になってしまいがちです。

どうぞ、リラックスして下さい。ゆっくり話して恥ずかしいことは何も無いのです。それどころか、あなたの発言が聴き易くなり、英語の苦手な多くの出席者には感謝されるでしょう

発言するのは、他の人に自分の意見を分かってもらうためです。賛成反対は、分かってもらった後のことです。

もう一度言います、発言は出だしが大事です。

発言の出だしを工夫すると、あなたの言いたいことが分かって貰えるようになります。すると、会議が面白くなります。

掲載: ITU ジャーナル Vol. 43, No. 5, 2013年5月

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国際会議一年生の教科書(1)国際会議に慣れる三段階

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【国際会議に慣れる道筋?はい、あります】

ぴーちゃん、あれから英語の勉強は進んでる?

勉強を続けてジュネーブの国際会議にも来てね。

今日は私がどうやって国際会議に慣れていったか、お話ししましょう。まず、物事には何でも段階を踏んで慣れていくというお話しから。

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私の最初の国際会議は1985年に遡ります。NTTに勤務していた頃、日本代表団の一人として世界電気通信連合 電気通信標準化部門 (ITU-T) 第二研究部会 (SGII) という、通信技術やサービスの標準化を検討し勧告を作成する会議に出席しました。

それから幾星霜。あの頃は自分が将来ジュネーブに住むことになるなんて思っても見ませんでした。

 

ITU-RAG_2017
ITU会議場にて。日本代表団のKさん(右)と筆者(左)、2017年

国際会議に慣れる三段階

私がITUの会議出席のため年に二回東京からジュネーブに行くようになった頃のことです。

ある通信業界の新聞のコラムで、「国際会議参加者には発展三段階がある」という説を読んで、大変納得したことがあります。

第一段階は、必死で議論についていくだけで精一杯の時期

第二段階になると、自分の意見を言えるようになる。

更に会議に慣れると、自分の意見だけでなく、会議の進行全体に貢献するような発言ができるようになる。これが第三段階。

自分の経験に照らしても、これは言い得て妙だと思います。

1985年3月、初めてITUの会議場に着いた日、今まさに始まろうとしている未知の経験への期待と興味で私は胸がいっぱいでした。国際会議場ロビーに整然と並ぶ何百もの郵便箱(ピジョンホール、“鳩の巣”と呼ぶのだと、会議の先輩から教えられました。会議で使われる膨大な量の文書を参加者に配布するために個人に割り当てられます。)に感心し、会議場の広さに圧倒されました。

会議が始まると、私は会議特有の用語には不慣れ、周りの参加者の誰も知らず、ひたすら必死でノートをとるだけで精一杯でした。その頃の私の目には、自分しか見えていませんでした。

出席回数を重ね、徐々に会議に慣れてくると、自分の担当している課題に関しては、議論の内容や流れが段々わかるようになります。そうすると、「ここでは○○を言わなくちゃ」という機会も出てきて、私も少しづつ発言するようになりました。

また、自分の発言できる会議の規模も変化してきました。初めは、テーマを良く理解でき、その上少人数の課題別専門家会合(ワーキンググループ)で、しばらくしてから、三桁の人数が集まる全体会合で、というように。

たとえ一回の短い発言でも、十分に内容を考え、手元に英語のメモを作り、と、しっかり準備をしてから手を挙げる習慣ができてきたのもその頃です。後に慣れてくると、準備がだんだん簡単になり、臨機応変に近づいていきました。

幸い英語で話すことには抵抗がなかったためもあり、第二段階の入り口には、3回目ぐらいの会議で行き着いたと思います。それでも発言が終わった途端、自分の言ったことは皆に通じただろうか、言いたいことをすべて整然と言えただろうか、などと不安でした。

第三段階まで行くには、少し飛躍する必要がありました。会議の進行に貢献する、議事が円滑に進むような提案ができるためには、一段高い目線を持って会議全体を見渡していなければならないし、また、その会議の持つ空気にも充分慣れている必要があるからです。

これは、単に会議場の空気に慣れるだけではできることではありません。議論の内容の理解はもちろん重要ですが、それだけでなく、会議の常連参加者と馴染みができ、ある程度の信頼関係ができていること、また、会議のプロトコルというか、会議に特有の手順もある程度分かっていないと、なかなかこういう発言をする度胸はできないものです。

私も含め日本人は、学校時代から社会人になるまで議論によるコミュニケーションの練習を充分に積んできているとは言えません。欧米の人々を見ていると一層強くそう思えます。そのため、会議に充分に慣れていないと、会議全体を見渡した上での発言はなかなかしにくいのではないでしょうか。本当はそこまで大きく考えず、会議が滞りなく進んで行くような発言をすればいいのですが。いざとなるとなかなかできないものです。

けれども、その心の壁を乗り越えてこの段階まで来ると、自分が国際会議を進めるために出席する他の人々と一緒に仕事をしているという実感が湧いてきて、楽しくなります。

国際会議もまた、「習うより慣れよ」ではないかと思います。いろいろな場所で経験を積むにつれ、発言にも多様なニュアンスを使い分けられるようになっていきます。これはもう、「慣れ」の功績です。そのためにも、同じ会議に参加する他の人々と、休憩時間などを利用して、他愛ない話であれ何であれ、話しをして、互いに知り合っておくことは、自分の心の緊張を和らげるために、大変役に立ちました。そのことについては、また後日、稿を改めて書くことにしましょう。

掲載: ITU ジャーナル Vol. 43, No. 4, 2013年4月

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