欧州で自分の考える正しさを語るとは?ースイス国鉄での経験から学んだこと

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【英語の勉強をしてるけれど話せない、と悩む方へ】
自分の考えを相手に説明すること、小さな疑問でも聞いてみることを習慣にすると、あなたは飛躍的に外国語で話ができるようになります。ではそれはどういうこと?ーーそれは例えばこんな風に日常生活の場面に表れるんです。

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スイス国鉄に手紙を書いて投函したのは月曜日。

金曜日には返事と共にこんなカードが届いた(写真)。32フランの金券だ(約3200円)。

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ああ、この労力が無駄になってもいいからとハラを決めて手紙を書いて良かった、と思った。

そして、これがヨーロッパなんだ、とも。

なぜこのカードが送られることになったんでしょう?こんなわけがあるのだ。

ある日のこと、私は夕方始まる会合のためにチューリヒに行った。チューリヒまでジュネーブからは乗り換え無しの列車で3時間弱の距離だ。

ところが会合の帰り道、最終の直行列車に乗り遅れた。

仕方ない、時間は長くかかるが、一本後のベルンで乗り換える列車に乗ればいい。ジュネーブに着く頃には、まだ帰宅するためのトラムは走っている。私は大して心配もしなかった。

ところが、その日に限って私の乗ったチューリヒ発ベルン行きの列車はベルンの手前で止まってしまった。スイスの冬の午後10時過ぎは真っ暗だ。その暗闇の中、どこにいるかもわからない。その間20分間ぐらいだった。

その20分間のおかげで、私はジュネーブに行く接続の列車に乗れなかった。

原因はわからない。車内アナウンスがガランとした車内に流れたが、ドイツ語だけだったので私にはわからなかった。スイス国鉄には珍しいことっだ。この国の列車では、たいてい仏独英語の三カ国語で放送があるのに。

私は、近くの乗客に「今なんて言ったんですか?」と尋ねるようと思ったが止めた。乗るはずだったジュネーブ行きに乗れないことは明らかだ。列車も動き始めた。今更理由がわかたっところで、私の助けにはならないと思ったのだ。

ベルン駅で待つこと30分、午後10時半を過ぎた駅はがらんとしていて寒かった。ジュネーブ方向に向かう列車に乗ったのは11時過ぎ。今度はちゃんと帰れると思うとホッとしたが、さすがに疲れもした。その列車は途中のローザンヌまでで終点になる。私はそこでもう一度乗り換えてジュネーブに行かなければならないからだ。

でもまあいいか、家には帰れる。

スマホで時刻表を調べると、私の家に向かうトラムの最終には間に合わないことがわかった。駅からタクシーを使わなければならない。

でもまあいいか、ジュネーブ駅前にはタクシーが待っている。

しかしジュネーブのタクシー代は世界一高い(と私は思う)。なぜ私はタクシー代を払わなければいけないのか?こうなったのはチューリヒ発ベルン行きの列車が遅れたからだ。そう思うと、これはスイス国鉄にタクシー代を賠償して貰わなければならないと思えた。

そこに車掌が検札に来た。

彼に事情を話し。誰宛に手紙を書けばいいか尋ねると、スイス国鉄はタクシー代を賠償しないという。

「それはいいから、私はスイス国鉄にこの件で手紙を書きたいんです。誰に宛てて書けばいいですか?」もうその時には私もカッカしていたから迫力があったんじゃないだろうか?

車掌は、カスタマーサービス(顧客係)の住所を書いた名刺大のカードをくれた。

私はジュネーブからタクシーに乗った。最終のトラムはとっくに出た後だった。タクシー代は32フラン(約3200円)。領収証を貰っておいた。

実際私は迷った。手紙を書くだけ無駄じゃないだろうかと。車掌に「賠償しません」と言われていたからだ。

けれども、やっぱりハラが納まらない。自分がスッキリするために事情を説明する手紙を書き、「、、、という理由ですから私はスイス国鉄にタクシー代32フラン分を請求いたします。同封の領収証を御参照してください。」と結んだ。

それが、意外や意外、4日後には冒頭のカードが私に送られてきたというわけだ。

それだけではない。スイス国鉄からの手紙には、タクシー代を弁償するだけでなく、「列車が遅れホテルに泊まらざるを得なくなった場合には、ホテル代も弁償します」と書いてあった。

他の国だったらどうなるんだろう、こういう場合?

スイスの人は真正直だなあと思うのはこういうときだ。私はタクシー代の件で手紙を書いたのだ。その返事に、ホテル代のことまで教えてくれるとは。黙っていても良さそうなものなのに。

あの深夜の列車で車掌に手紙を書いても無駄だよと言われても、諦めなくて良かった。理を分けて話せばわかる人達がいるんだと思った。

人は皆、それぞれなりの正しさを持っている。10人の人がいれば10通りの正しさがある。

あの車掌の言ったことも彼なりの正しさだったんだろうと思う。

そして、私には私なりの正しさがあった。

私は、自分なりの正しさをスイス国鉄に説明した。スイス国鉄には賠償のルールがあるのだろうが、それを掘り当てたのは私が手紙を書いたからだ。

うーーん、これがヨーロッパなんだと思うのだ。自分なりの正しさを主張できるところ。結果はともかく、言ってみることができるところ。

今でこそ私はこんな知った風なことを書いているけれど、この文化に慣れるまで20年かかった。今でも、欧州人の友人たちを見ていて、「そこまで言ってみるの?」と思うことがままある。そういう私はヨーロッパでは主張の少ない人、温和しい人なんだろうと思う。

それでもいい。納得できないことがあったら、「私はこういう理由で、こう思います」と言えるところ、むしろ互いにそう言い合って成り立っている社会。それが言い争いではなく、淡々と互いに自分の考えることを語り合える社会。それがヨーロッパだと思う。もちろん、そこには良いところも不便なところもあるが、このカードが封筒から出てきたときは、「言って良かった」と思ったのだった。

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投稿者: Yoshiko KURISAKI (栗崎由子)

I am Yoshiko Kurisaki, Japanese, executive consultant specializing in cross-cultural management between Europe and Japan. Being based in Geneva, I travel between Europe and Japan. Culture may be a stop factor in business. That said, if you go beyond that, culture is a vaIuable source of inspirations and innovation. I help European businesses to turn cultural barriers to innovation.   栗崎由子(くりさき よしこ)、ダイバーシティ マネジメント コンサルタント。二十余年間欧州の国際ビジネスのまっただ中で仕事をしてきました。その経験を生かし、日欧企業むけにビジネスにひそむ異文化間コミュニケーションギャップを解消し、国籍、文化、性別など人々の違いを資源に変えることのできるマインドセットを育てるための研修やコンサルティングを行なっています。文化の違いは”面倒なこと”ではなく新しい価値を生み出す源泉です。日本人の良さを国際ビジネスに生かしながら、違いを資源に変えて価値を創造しましょう。ジュネーブ在住で、日本とスイスを往復しています。

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