市民が引っ張るICTの変化ー2010の総括とこれからの展望

皆様、あけましておめでとうございます。

松の内を過ぎてからのご挨拶になってしまいました。日本からもどって、すぐにジュネーブ大学の社会人コースが始まったのですが、そのため、暮らしを立て直すために、今までかかってしまいました。

さて、新年を迎えるに当たり、私の見て来た2010年を振りかえり、これから始まる2011年を展望してみました。

  • 携帯電話はパームトップコンピュータへ。
  • ICTの大衆化が、新しい利用者ライフスタイルを生み出す。それが、技術と利用方法の開発を引っ張る。
  • ということは、技術と、それを必要とする人々との協働が更に必要になる。
  • CSR(企業の社会責任)は、日常ビジネスの新しい進め方。
  • ICTの国際化は欧州から学ぶところが大きい。
  • ネットで繋がった市民が、皆で知恵を出す仕組みーボランティア・コンピューティングの潜在力に注目。
  • 2011年から始まる未来のキーワード:オープン、面白い、相互乗り入れ
  • 企業は、顧客と共に問題解決方法を模索するビジネスに転換。「ものを売る」から「価値を売る」へ。
  • 楽しいことにはエネルギーがある!

報告書はこちらへ

広告

パケットとブロードバンドが通信とメディアにビジネスモデル変革を迫る

インターネットの生みの親、ヴィント・サーフ (Vint Cerf) が、エコノミスト誌とのインタビューで凄いことを言っていました。ざっと要約するとこういうことです:

  • インターネットの基本技術がパケット通信であることには、今も変わりがない。
  • ブロードバンドネットワークのスピードが急速に上昇し、今では、動画(ビデオ)を送る場合、人が動画を無瑠のに必要な速度よりも高速で送れるようになった。
  • 本、イメージ、ビデオなど、多種の情報をディジタル化し、パケットにして通信することができる。
  • パケットは情報内容を認識しない。ひたすらせっせとブロードバンドの中を走り続けるだけ。
  • ということは、将来、コミュニケーションはファイルトランスファーになるということだ。
ヴィント・サーフ氏

それはつまり、従来の通信、メディア、コンテンツ産業のビジネスモデルが崩れると言うことです。例えば、通信ですと、今まで回線を保留して使っていた時間に応じて料金を払っていたものが、高速ネットワークを使うようになると、回線を使う時間が非常に短くなってしまう。ですから、時間に応じて料金を払う仕組みは変わらざるを得ません。

コンテンツ、つまり、データの量に応じて課金するという方法もありますが、ビジネスとしては、それでは成り立たないでしょうね。ビデオのような情報量のおおきいコンテンツの場合、利用者は、大変高額な通信料金を払ってビデオを見なければならなくなるわけですから。お客は他のメディアに流れて行ってしまいます。

また、メディア、コンテンツ産業にとっても、大きな変革の必要が迫っているということを意味します。本、新聞、テレビなどの読者、視聴者は減少傾向を辿るでしょう。新聞を買わなくても、テレビを見なくても、同じ情報を手に入れるために、ウェブ、スマートフォン、iPadなど、他にもいろいろなメディアがあるのです。

折しも、メディア王として知られる、ルパート・マードックの率いるニューズ・コーポレーション社(英国)が、iPad専用の新聞を近々発行するというニュースが出ました。ザ・デイリー (The Daily)と呼ばれるその新聞は、有料です

The Daily will look like this.

これは偶然ではありません。私には、ニューズ・コーポレーション社の、多様なディジタルメディアの時代に合わせて自らを変えていこうとするチャレンジと思えます。言い換えると、ニュースというコンテンツを持つ産業の、メディア変化の時代に生き残っていくための一つの壮大な実験なのです。

従来のビジネスモデル変革を迫られる、通信、メディア、コンテンツ産業は、この大きな変化に対してどう動いていくのか、また、時代の変化に利を得て、どんな斬新なニッチプレイヤーが続々と登場してくるのでしょうか。

2011年は、通信とメディア産業から目が離せません。