日本人はなぜ世界が読めないか ー 講演ノート

先週、標記のテーマの講演会に行きました。大変興味深かったので、ここに私のノートを記します。
講演者は、ジュネーブをご訪問中の、磯村 尚徳(いそむら ひさのり)氏。NHK報道局長、パリ日本文化会館館長などの要職を務めてこられ、日本を欧州から見る視点をお持ちの方です。
磯村さんは、豊富なご経験に裏打ちされて、いくつもの引き出しを持っておられる。そこから自在に、多様な話題を引き出しながら、大きな問題意識に結び付けていくという、お話ぶり。さすがは報道の世界を長く歩いてこられた方だと感心しました。きっと、ご本人自身も勉強熱心なのでしょう。
アングロサクソン報道と、フランス語圏のそれとを随所で対比し、日本の報道が、アメリカに強い影響を受けていることを指摘しておられたことは、大切だと思いました。
イントロ
  • ジュネーブに関連してー(国際連盟脱退演説をした)松岡洋右全権のころから、日本は(世界の中の自国の位置に対して)KY
  • 情報が多いとかえって世界が見えないのが現代
本論
日本人のKYには大まかに言って、三つの理由がある。
① メディアの責任
  • アメリカ一辺倒。ものの見方が、アメリカの追随。
  • その反面、多くの重要な事実を見落としている。例:サルコジの財政改革方針演説には、来年欧州連合議長国になるフランスが、何をしようとしているか現れているのに、日本では報道されなかった。
  • 欧州連合は歴史の壮大な実験。その熱意を見落とすな。
② 日本人には、今世界で起きているパラダイムシフトがわからない
  • 世界のリーダー国は、秩序ある資本主義を育てるための、政府の介入に動いている。
  • ドイツは製造業の立て直し政策が奏功し。経済が持ち直した。G20における、Angela Merker首相の演説。(日本では報道無し。)
  • 規制緩和を奉じているのは、先進国で日本だけ。
③ 日々薄れる日本の存在感 ーー モノ、ヒト、カネの見地から
ーモノ
  • モノの交流は大事。良質なモノを外国に出すべき。
  • 今や、モノの存在感は、韓国に圧倒されつつある。日本はそれを憂慮すべき。
ーヒト
  • 日本人はコミュニケーション力が不足。今も昔も同じ問題。
ーカネ
  • カネの存在感も薄い。円高は対外投資のチャンス。今使わないで、いつ使う?
質疑応答も興味深い議論がありました。
  • 外国語でコミュニケーションできる人材を、国として育てよ。Public Diplomacy(草の根外交、とでもいいましょうか)を担う人々を多く育てるべき。
  • 巨大メディア間の資本提携の怖さー受け手にとって、情報(=ものの見方)がますます偏る危険。 News Corpのメディア買収、楽天ーソフトバンク
ジャーナリズムの専門家として視点は、メディアの資本関係が、視聴者に届く情報の質と量を支配する点など、政治、経済の専門家とはまた違ったところを突いておられ、興味深く拝聴しました。

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