アクセシビリティーと国際標準 (2)

アクセシビリティーと国際標準の会議、二日目です。昨日と打って変わって、私は忙しかった。ブレイクの時間に、話す人が次々にいたからです。これが会議の醍醐味です。たまたま隣に座った人が、どんな世界を持っているか、未知への探検みたいなものです。

今日の分科会では、第三グループ、e-アクセシビリティーに参加しました。その中でまた、テーマ別に分かれてブレーンストーミング。けれども、出てきた結論を見ると、大きな共通点がありました。

ー 障がい者のICTへのアクセスを向上させるために、技術標準化がどう役立つかを理解し、課題を立てるためには障がい者の意見を聞く必要がある。

ー 標準化決定プロセスも、何がどう標準化されたかという結果も、今まで部外者には全くわからなかった。それを改善し、プロセスから公表する必要がある。

ー 技術者と、利用者とは、共通の言葉を持たないことが多い。その間に立って、双方の理解を深める手助けをする、通訳のような役割を果たす人が必要である。

要するに、今までは技術を持つ人と、その便宜を享受するべき人との間にコミュニケーション不足があった。これからそれを改善しよう、ということですね。

そのことに、反対する人はいないと思います。

問題は、ICTへのアクセスに困ることのない人にとり、そのことに困る人が、なぜ困るかを理解することが、言葉で言うほど簡単ではないことです。

その議論のあったセッションの後、こんなことがありました。

カナダから来た、Black Berryメーカーの若いエンジニア、ジョンと、昼食のテーブルで一緒になりました。若い人らしい、素直で率直な人です。

彼は、これが自分のデザインしたキーボードです、と言って、最新型の美しいBlack Berryを見せてくれました。

私は、美しく整然と並んだ、小さくて精密なキーボードに感心しました。けれども、文字が小さいので、薄暗いところでは、私の目では読めないと思いました。キーの一つ一つも、使い慣れない人には小さすぎるように思います。そこで、「老眼で、キーボードの文字の読みにくい人や、指の動きの器用でない人のために、もっと大きなキーボードを作れますか?」と、ジョンに尋ねました。

「大きさ?関係ないなあ。Black Berryを使う人は、キーを見ないでタイプしてるから。」(私:え?それ、一体誰のこと?)

「Black Berryを使い慣れない人には、そんなことはできないわ。」と言うと、ジョンは、それなら、と言って、スクリーンに出るキーボードを見せてくれました。Black Berryに付いているものよりは、少し大きい。でも、やはり、私のスマートフォンのキーボードよりもまだ小さい。

「iPadのキーボードぐらい大きい方が良いわ」

「あれは大きすぎるよ。」

若いジョンには、キーボードを押すことが上手くできない人、Black Berryや、携帯電話の小さなスクリーンに写る、精密でも小さな文字を読めない、読むために苦労する人のことが、まだわからないのでかもしれません。実際には、iPadの大きなキーボードは、障がい者やお年寄りに好評という声をボチボチ聞き始めているのですが、うーん。

本文の機種ではありません。

ジョンのような反応は、彼一人でのものはないでしょう。同じようなことは、他の場合にも数多くあると思います。

これは、高齢化社会、障がい者の、情報へのアクセスを考える際の、コミュニケーションギャップの一例と言うべきか、または、彼の会社は、自社製品を使いこなせる人にマーケティング対象を絞っている、と言うべきか、わかりません。

なにはともあれ、今回の議論の中で、多くの参加者が、障がい者、高齢者など、ICTへのアクセスが充分にできない人々に、アクセス技術標準化の作業に参加して貰う必要があると指摘したことは、大切な一歩だと思います。お互いの理解と言うことは、すぐにできることではありませんが、時間をかける値打ちのあることです。それはまた、ICT成熟への道のりだと思います。

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投稿者: Yoshiko KURISAKI (栗崎由子)

I am Yoshiko Kurisaki, Japanese, executive consultant specializing in cross-cultural management between Europe and Japan. Being based in Geneva, I travel between Europe and Japan. Culture may be a stop factor in business. That said, if you go beyond that, culture is a vaIuable source of inspirations and innovation. I help European businesses to turn cultural barriers to innovation.   栗崎由子(くりさき よしこ)、ダイバーシティ マネジメント コンサルタント。二十余年間欧州の国際ビジネスのまっただ中で仕事をしてきました。その経験を生かし、日欧企業むけにビジネスにひそむ異文化間コミュニケーションギャップを解消し、国籍、文化、性別など人々の違いを資源に変えることのできるマインドセットを育てるための研修やコンサルティングを行なっています。文化の違いは”面倒なこと”ではなく新しい価値を生み出す源泉です。日本人の良さを国際ビジネスに生かしながら、違いを資源に変えて価値を創造しましょう。ジュネーブ在住で、日本とスイスを往復しています。

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