アップルは高齢化社会を睨んだマーケティングでも先行か?

スイス第二の電話会社、サンライズが、ついに(やっと)iPhone4に進出。そのTVコマーシャルは、文字の拡大、写真のズーム インなどお年寄りへの便利さを強調しているので、面白いと思いました。iPohneや、iPadが、ハイテク機器を使い慣れない人にも使いやすいいろいろな機能を持っていることは、身体障がい者のためのデザインを研究している人々などが早くから注目していました。

このテレビコマーシャルで、アップルは高齢化社会マーケティングでも、先行した、といえるかどうか、興味を持ってアップル社を見ています。

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高齢化社会を迎える日本

エコノミストという、ロンドンで発行され、世界中で読まれている雑誌があります。今週号では、世界で最初に本格的高齢化社会を迎える日本をテーマに、特集が組まれています。

私も半世紀以上生きた人間、高齢化社会は関心のあるテーマですので、エコノミスト誌が外からどう日本を見ているかという視点から、見出しだけご紹介したいと思います。

(ご注意: ここに載せた翻訳は、筆者個人による意訳です。)


トップ記事
日本現象
世界で最初に、本格的な高齢化社会を迎える日本が、世界中に教えるだろうことは、人口の高齢化が経済成長にブレーキをかけるということだ。

トップ記事の正式な全訳はこちら

特集記事
未体験ゾーンへ
日本は歴史上のどの国よりも高速度で高齢化している。そして、その測り知れないほど大きな経済、社会的結果も含めて。なのになぜ、日本はそのための対策を殆ど講じていないのか?

「変化を作りつつある」
数十年間に及ぶゴタゴタ状態を抜け出し、日本の政治は動き始めた。

「下りエスカレーター」
人口減少のために、成長に再び点火することも、デフレの収束も困難になる。

「インサイダーとアウトサイダー」
かつて神話にまでなった日本の企業文化は、減少した労働力人口を抱え、知的価値を生み出すべき今の経済に不適合である。

「企業の安楽死」
国内産業の生産性を上げるために、日本は古くさい、利益の上がらない会社をつぶさなければならない。

「再び充電するために」
日本には、強い、革新的な能力がある。しかし、それをもっと上手に使う必要がある。

「社会不安」
日本の社会保障法案は手が付けられなくなりつつある。

「友人と隣人と」
日本の近隣諸国では経済発展が著しいというのに、日本とそれら隣国との外交関係は複雑化しつつある。

「出産不足」
なぜ若い日本人たちは、そんなに出産に消極的なのか?

「文化革命を!」
上品な凋落を止めたいなら、日本は思い切った手段を採らなければならない。

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個人的な感想ですが、読んでいてうなづくことが多いと共に、ちょっとこわくもなりました。

この記事では、日本で言えない、または言いにくいだろうこともスパスパ明快に論じています。女性差別や、外国人の移住に対する厳しい規制を止めて、労働市場縮小に歯止めをかけよ、などは、日本国内で日本人にはなかなか言いにくいのでは?です。外から見る方が日本の現実はクッキリ見えるのでしょうか。

人口の年齢構成の変化という大きな流れは現実のことで、誰にも変えられません。その事実を見据えて、将来設計をしなければならないのは、政策責任者だけでなく、個人にも充分当てはまると、自省しながら思いました。

それははまた、日本の消費者層全体が、高齢化するということでもあります。ICT企業にとっても、45歳以上の人々にとって使いやすい、必要とされる商品、サービスを開拓、充実させる必要が増大するでしょう。何故45歳か?ーーそれは、この年齢層はディジタル後発市民であり、またそろそろ老眼の始まる時期でもあるからです。

注:図表、イラストはエコノミスト誌より引用

北朝鮮の韓国砲撃のニュースを聞いて

11月23日に起きたこの事件。私がそれを最初にを知ったのは、11月24日でした。

今日、27日は、雪に降り込められた土曜日。日本メディアとヨーロッパメディアではどう報道しているのか、違いは何か?日本(日経新聞、NHKラジオ)と英国(BBC、国際ニュースウェブキャスティング)による報道を比べてみました。

日本のメディアに臨場感が強く、BBCは少し距離を置いているのは、当然のことと思います。

日本のメディアは、現地の様子を生々しく伝える特派員の報告、管内閣の現時点での対応と共に、東アジア国際政治の専門家による、中国、アメリカの利害を視野に入れた解説とを報道していました。日本は現地に隣接しているので、報道も盛りだくさんです。

BBC報道の、25日のテーマは、「何故中国は沈黙しているのか?」、26日は、「黄海で行われる米韓合同軍事演習への影響」。この事件を国際政治地図の中に置いて見ると、アメリカ、中国という二大国の利害が、北朝鮮、韓国の危機の行方に重みのある影響を持つと、BBCは見ているわけですね。現地から来る具体的情報はありませんが、その分、大きな時間の流れと地球規模での力の応酬の中で大局を見ることができるということでしょう。

その中で、ICTに関係する記述で、目を惹かれた報道がありました。ソウルの街の様子を伝える記事の中にある、ごく短い記述です。(日経新聞、 国際版、11月24日付け、6ページ)

携帯電話のメールで軍の予備役召集というウソ情報を流した人がいる、警察が捜査中と、というのです。それ以上の記述がないので、詳しいことは私にはわかりません。もし本当なら、ちょっと信じられないと思いました。けれども、情報を速報するために携帯電話メールを使うことが珍しくなくなった社会では、こういういたずらもありうるなあとも。ただ、韓国では、人々が動揺しているときだろうに、そういうことをする人もいるのかと、やや複雑な気持ちでした。

複雑というのは、ICTは使いようで、役にも立てば、迷惑にもなることが、ここに端的に出ているからです。動機は何であれ、この件は、悪い冗談では片付かないと思いますが、反面、韓国に限らず、社会全体で人の心が動揺しているときには、同様のことが起きるだろうとも思います。携帯電話のような情報機器は便利ですが、そこから伝わる情報を受け取る人に健康な判断力があってこそ役立つ、ということですね。

でも、もし私が、今のような状態の韓国にいて、そこに心の動揺につけ込んだような情報がメールで届いたらどう反応するか、、。正直言って、あまり自信がありません。

うーんと唸って、防御策を考えるに、怖い情報であるほど、一つの情報源を鵜呑みにせず、いくつかの情報源に当たってみる、ということでしょうか。

日本人はなぜ世界が読めないか ー 講演ノート

先週、標記のテーマの講演会に行きました。大変興味深かったので、ここに私のノートを記します。
講演者は、ジュネーブをご訪問中の、磯村 尚徳(いそむら ひさのり)氏。NHK報道局長、パリ日本文化会館館長などの要職を務めてこられ、日本を欧州から見る視点をお持ちの方です。
磯村さんは、豊富なご経験に裏打ちされて、いくつもの引き出しを持っておられる。そこから自在に、多様な話題を引き出しながら、大きな問題意識に結び付けていくという、お話ぶり。さすがは報道の世界を長く歩いてこられた方だと感心しました。きっと、ご本人自身も勉強熱心なのでしょう。
アングロサクソン報道と、フランス語圏のそれとを随所で対比し、日本の報道が、アメリカに強い影響を受けていることを指摘しておられたことは、大切だと思いました。
イントロ
  • ジュネーブに関連してー(国際連盟脱退演説をした)松岡洋右全権のころから、日本は(世界の中の自国の位置に対して)KY
  • 情報が多いとかえって世界が見えないのが現代
本論
日本人のKYには大まかに言って、三つの理由がある。
① メディアの責任
  • アメリカ一辺倒。ものの見方が、アメリカの追随。
  • その反面、多くの重要な事実を見落としている。例:サルコジの財政改革方針演説には、来年欧州連合議長国になるフランスが、何をしようとしているか現れているのに、日本では報道されなかった。
  • 欧州連合は歴史の壮大な実験。その熱意を見落とすな。
② 日本人には、今世界で起きているパラダイムシフトがわからない
  • 世界のリーダー国は、秩序ある資本主義を育てるための、政府の介入に動いている。
  • ドイツは製造業の立て直し政策が奏功し。経済が持ち直した。G20における、Angela Merker首相の演説。(日本では報道無し。)
  • 規制緩和を奉じているのは、先進国で日本だけ。
③ 日々薄れる日本の存在感 ーー モノ、ヒト、カネの見地から
ーモノ
  • モノの交流は大事。良質なモノを外国に出すべき。
  • 今や、モノの存在感は、韓国に圧倒されつつある。日本はそれを憂慮すべき。
ーヒト
  • 日本人はコミュニケーション力が不足。今も昔も同じ問題。
ーカネ
  • カネの存在感も薄い。円高は対外投資のチャンス。今使わないで、いつ使う?
質疑応答も興味深い議論がありました。
  • 外国語でコミュニケーションできる人材を、国として育てよ。Public Diplomacy(草の根外交、とでもいいましょうか)を担う人々を多く育てるべき。
  • 巨大メディア間の資本提携の怖さー受け手にとって、情報(=ものの見方)がますます偏る危険。 News Corpのメディア買収、楽天ーソフトバンク
ジャーナリズムの専門家として視点は、メディアの資本関係が、視聴者に届く情報の質と量を支配する点など、政治、経済の専門家とはまた違ったところを突いておられ、興味深く拝聴しました。

欧州における医療・健康分野でのICT利活用事例

欧州では、医療サービスに関する情報システムの相互運用性を可能にする技術として、ICTは、異なる国、医療行政単位をまたがり活用されている。本稿では、そのような相互運用システムの代表として、患者データの多国間流通と利用を可能にすることを目指す、スマート オープンシステム (Smart Open Services for European Patients,epSOS)、病院情報システムのパイオニアであるジュネーブ大学病院の患者情報統合ネットワーク(The Clinical Information System, CIS) 及び、患者を中心に、様々な医療サービス組織のデータ標準に留意して作られた、オランダの血栓症ディジタル・ログブック (Thrombosis Digital Logbook)を取り上げ、医療現場の必要性を中心に据えた、ICTの医療、健康分野での活用を考察した。

この3つのケースから、異なる所在地、機関に所属する利用者の相互接続と、市販のICTを利用し低コスト化を図ることとが医療分野でもICT利活用の潮流であることが分かる。利用者に役立ち、使いやすいシステムを作る為には、利用者とICT技術者との共同作業が不可欠である。

キーワード: 欧州、医療、ICT、電子処方箋、病院内情報システム、相互運用、事例、スマートカード、HL7、ID, セキュリティ管理、オープンシステム 現場の知、epSOS, Digital Logbook

報告書全文はこちらです。

アクセシビリティーと国際標準 (3)最終日

アクセシビリティーと国際標準会議も最終日を迎えました。

今日は、今まで二日間の議論から出てきた、アクセシビリティー技術の標準化課題を基に、行動計画を立て、その担当者(機関)決め、更にプライオリティー付けをしました。

立場の違う人々が集まっているので、活発な議論となりました。それでも、行動計画は常識的な方向に纏まったと思います。

思うに、標準化をテーマにする会議に出席するのは20数年ぶりでした。日本にいた頃、ITUの会議に出ていましたが、それ以来です。

世界の標準化の動きは変りました。

まず、気付いたのは、ITU, ISO, IECという、いわば伝統的な世界の主要標準化機関が、連携を深めたこと。今までも、ITUとISOとの連携はありましたが、今ではそこに、もともと国際機関ではなく、企業団体であるIECも入って、三つの機関の連携が以前よりずっと強まったように見受けました。

次に、標準化が、これらの由緒あるとも言うべき機関の専売特許でなくなったこと。それを、これらの機関も受け入れ、外部のステークホルダーの知識、経験、ニーズを広く集めて標準化に取り入れようとしていること。そもそも、インターネットを支えるTCP/IPなどの多種の技術は、これらの組織の外で、自主的に集った人々によって、いわば草の根的に決められ、進化してきました。サイバースペースを情報の宝庫として使えるようにしたwww (World Wide Web)も然りです。

それでも、インターネットやWWWを開発した人々は、技術専門家でした。今回の会議では更に、身体障がい者や高齢者など、身体機能を充分に使えない人々までをも、標準化についての要望、評価を聞くために加えようというものです。技術を必要とする人に聞くという姿勢は大変重要ですが、これらの機関の場合は、それが新鮮に聞こえます。今まで標準化活動が専門家にのみ担われてきたのが、アクセシビリティーという人に直接関わる課題が出てきて、標準化プロセスも参加者を多様化する必要ができたということでしょうか。

私にとっても、会いたかった人々に会えました!

WWWコンソーシアム(W3C)で、ウェブのアクセシビリティーガイドライン作りを引っ張っている、Judy Brewerさん。彼女自身も車いすの人とは、ご本人にお会いして初めて知りました。

他にも、誰にも使いやすいウェブサイトを作る仕事をしているドイツの若い技術者、JBさん。ICTにユニバーサルデザインの考え方を根付かせることにヨーロッパで一番熱心なアイルランドで、政府の立場でその仕事をしているEOさん。

また、日本で点字の着いたICカードを試作された、ICカードの専門家、YYさん。おだやかに語られるお仕事のお話からは、ご苦労、工夫の数々が覗われ、思わずお話に釣り込まれました。日本で仕事をしながら、国際標準化の活動を続けることには、言語の齟齬など、日本ならではの難しさもまたあります。私も、以前ITUの標準化会合を担当し、よく似た経験したので、YYさんのお話が人ごととは思えませんでした。

参加者の中には、全盲の方々、車いすに乗った方々が何人もおられたことは、私にとっても新しい体験でした。

このように、同じテーマに違う立場から関心を持つ人々を集めた今回の会議は、目的を達成したと思います。見解の違いをお互いに学ぶことができ、議論も豊かなものでした。

これから、標準化のプロセスは、IGF (Internet Governance Forum)のように、マルチステークホルダー方式という、色々な立場の人々が比較的自由に集って合意を形成するようになるのでしょうか?標準化の場合、最後には具体性のある技術仕様や、利用手順などを決めなければいけないので、最後には専門家がミッチリ仕事をすることになるとは思いますが。これからの変化を見まもりたいと思います。

アクセシビリティーと国際標準 (2)

アクセシビリティーと国際標準の会議、二日目です。昨日と打って変わって、私は忙しかった。ブレイクの時間に、話す人が次々にいたからです。これが会議の醍醐味です。たまたま隣に座った人が、どんな世界を持っているか、未知への探検みたいなものです。

今日の分科会では、第三グループ、e-アクセシビリティーに参加しました。その中でまた、テーマ別に分かれてブレーンストーミング。けれども、出てきた結論を見ると、大きな共通点がありました。

ー 障がい者のICTへのアクセスを向上させるために、技術標準化がどう役立つかを理解し、課題を立てるためには障がい者の意見を聞く必要がある。

ー 標準化決定プロセスも、何がどう標準化されたかという結果も、今まで部外者には全くわからなかった。それを改善し、プロセスから公表する必要がある。

ー 技術者と、利用者とは、共通の言葉を持たないことが多い。その間に立って、双方の理解を深める手助けをする、通訳のような役割を果たす人が必要である。

要するに、今までは技術を持つ人と、その便宜を享受するべき人との間にコミュニケーション不足があった。これからそれを改善しよう、ということですね。

そのことに、反対する人はいないと思います。

問題は、ICTへのアクセスに困ることのない人にとり、そのことに困る人が、なぜ困るかを理解することが、言葉で言うほど簡単ではないことです。

その議論のあったセッションの後、こんなことがありました。

カナダから来た、Black Berryメーカーの若いエンジニア、ジョンと、昼食のテーブルで一緒になりました。若い人らしい、素直で率直な人です。

彼は、これが自分のデザインしたキーボードです、と言って、最新型の美しいBlack Berryを見せてくれました。

私は、美しく整然と並んだ、小さくて精密なキーボードに感心しました。けれども、文字が小さいので、薄暗いところでは、私の目では読めないと思いました。キーの一つ一つも、使い慣れない人には小さすぎるように思います。そこで、「老眼で、キーボードの文字の読みにくい人や、指の動きの器用でない人のために、もっと大きなキーボードを作れますか?」と、ジョンに尋ねました。

「大きさ?関係ないなあ。Black Berryを使う人は、キーを見ないでタイプしてるから。」(私:え?それ、一体誰のこと?)

「Black Berryを使い慣れない人には、そんなことはできないわ。」と言うと、ジョンは、それなら、と言って、スクリーンに出るキーボードを見せてくれました。Black Berryに付いているものよりは、少し大きい。でも、やはり、私のスマートフォンのキーボードよりもまだ小さい。

「iPadのキーボードぐらい大きい方が良いわ」

「あれは大きすぎるよ。」

若いジョンには、キーボードを押すことが上手くできない人、Black Berryや、携帯電話の小さなスクリーンに写る、精密でも小さな文字を読めない、読むために苦労する人のことが、まだわからないのでかもしれません。実際には、iPadの大きなキーボードは、障がい者やお年寄りに好評という声をボチボチ聞き始めているのですが、うーん。

本文の機種ではありません。

ジョンのような反応は、彼一人でのものはないでしょう。同じようなことは、他の場合にも数多くあると思います。

これは、高齢化社会、障がい者の、情報へのアクセスを考える際の、コミュニケーションギャップの一例と言うべきか、または、彼の会社は、自社製品を使いこなせる人にマーケティング対象を絞っている、と言うべきか、わかりません。

なにはともあれ、今回の議論の中で、多くの参加者が、障がい者、高齢者など、ICTへのアクセスが充分にできない人々に、アクセス技術標準化の作業に参加して貰う必要があると指摘したことは、大切な一歩だと思います。お互いの理解と言うことは、すぐにできることではありませんが、時間をかける値打ちのあることです。それはまた、ICT成熟への道のりだと思います。