MWC 訪問記−2、発展を支える携帯電話と発電装置

電気のない村に携帯電話を

現在携帯電話は、アフリカや南アジアを初めとする発展途上国で、生活に必要不可欠の道具になりつつあります。SMSを使った少額ファイナンスの急速な発展は、そういう諸国を活気づけました。SMS自体は高度な技術ではありませんが、利用者の必要性と携帯電話の機能とが上手く結びついた、ローテク イノベーションの好例です。

SMSによる少額の送金が普及し始めると、電線の届かない地域の人々にも、携帯電話は必要となります。その需要に応えるため、基地局に必要な電力を、太陽光や風力をエネルギー源として発電する設備を提供する会社がいくつかありました。

VNL社の携帯電話用太陽光発電装置

その一つが、インドのVNL社です。VNL社は僻地を対象にした電気通信用発電装置に的を絞り、そのための技術開発、商品開発、低価格設定が売りものです。写真に写っているように、“地方コミュニティーのコミュニケーション Communications for rural communities”がキャッチフレーズ(写真)。この装置は6時間で設置でき、太陽光のみ使用して発電。耐久テスト済みで、現在、インドやアフリカの通信事業者、通信設備建業者と商談が進行中とのことでした。

太陽光発電装置は村のコミュニケーション インフラ

ゼファー社の風力発電装置。手に持つブレードはボーイング旅客機と同じ素材。

優秀な技術を持った日本の会社が、風力発電装置を製作していることを知ったのは嬉しいことでした。ゼファー株式会社 (Zephyr Corp.) は、小型風力発電装置の専門メーカーです。実際には、太陽光と重油発電とを組み合わせたシステム(ハイブリッド)を提供し、十分な風力がないときにも電力供給を続けられるようにしています。写真の風力発電設備の重さは18キロ弱。鉄柱の先についているブレード(はね)は、軽くて丈夫。ボーイング社の旅客機の翼と同じ素材で作られており、どんな風力にも耐えるそうです。航空機のために開発された高度な技術が、このような形で生かされていることに感心しました。(写真 ゼファー社)

シンガポールに本社を置くアジアの国際企業、Eltek Valere社も同じくハイブリッドを提供しています。この会社のハイブリッドは、太陽光と重油を使った電池です。こちらもやはり電話会社に的を絞った発電設備でした。ゲリラによる誘拐の危険のあるアジアの某国奥地に発電設備を設置した際には、現地有力者の協力を仰いだといいます。発展途上国では、技術力だけでなく、設備を設置する村の人とつながりを持つことも、またビジネスのうちなのです。

通信キャリアの戦略的CSR

通信事業者の社会貢献活動の展示もありました。ボーダフォン財団が、ロックフェラー財団など、他の財団と共に国連と共同で進めるmHealth(mヘルス)プログラムです。このプログラムは、携帯電話を使った、発展途上国向けの、乳児健康診断、エイズ予防など公衆保険衛生向上を目指す個別のプロジェクトに資金提供するのが目的です。MWC会期中には、フランステレコムの出資するオレンジ ヘルスケアの参加も発表されました。

このように、国連機関など公的機関と提携し、CSRをアピールしつつ、長期的視野で事業機会、開発アイデアを捉えていこうとする大キャリアのあることは、日本企業にも参考になると思います。急がば回れも戦略なのです。

(この記事は平成22年4月26日発行の通信興業新聞に記載されました。)

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