Katrin Verclasに会う

私のヒーローに会いました。とても幸せ!

以前、あるNGOでボランティアの仕事をしていた時、偶然ウェブで彼女の仕事を知りました。

彼女は素晴らしいウェブサイトを育てています。携帯電話を使って、貧しい国の人々に役立てるプロジェクトを一堂に集めた、とても豊かで役立つウェブサイト

今年のLift ’10コンファランスで、一番楽しみにしていた人でした。

思った通り。彼女のプレゼンテーションは素晴らしい!自分が本当に知っている事実の積み重ね。それを彼女がどう見るかという、自分の考え。

彼女は、Katrin Verclas さん。
セッションの終わりに、手を挙げて彼女に質問してみました。「高度な技術に望むことは何ですか?」

カトリンさんの答え、「貧しい国の人々が、安価な料金で携帯を使えることを可能にする技術です。1日1ドルの収入で生きる人々にとって、一通2セントのSMSは高価なのです。」

これこそ、私の聴きたかったことでした。それが先端技術かどうかということよりも、人により添う技術が欲しい。そういうメッセージです。

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MWC 訪問記−3、人と技術が出会うために

人と技術を出会わせよう

技術を世に出してみると、それが、制作者の予想しなかった、思わぬ需要に応える、ということがあります。

例えば、携帯画面上の文字を大きくする機能。スマートフォンには標準装備ですが、老眼の始まる45歳以上の人々には、文字を読み易くする親切な機能です。これは現在高齢化社会に入りつつある国々では、今後、基本機能となるでしょう。

NTTドコモ社の「らくらくホン」は、シルバー市場向けに的を絞って開発した商品です。この電話機には、耳の遠い方のために、通話者の声を、文字にしてスクリーンに掲示する機能があります。種明かしは、電話が翻訳機能のあるサーバーに繋がっていることですが、これを応用すると、電話を使った自動翻訳も実現できそうですね。近い言語どうし、例えば英語とフランス語相互なら、かなりの精度で自動翻訳できるところまで技術開発が進んでいますから。また、別の例ですが、日本語を勉強している留学生が、通話音声を文字化する機能を使い勉強に役立てたというお話しを、別のところで伺ったこともあります。

同じドコモ社の「イマドコホン」は、もともと、保護者と離れたところにいる子供が何処にいるかわかるよう開発された携帯電話ですが、その位置情報機能の使い方には、携帯電話の発する位置情報をボランティアたちが危険通報のために駆使し、市民ジャーナリズムにまで成長した、ケニアのUshahidiを連想させられます。Ushahidiは、スワヒリ語で「証言」という意味です。もともとは、2008年、ケニアの大統領選挙後に起きた国内騒擾の祭に、ジャーナリストがSMSを使い、国内の危険箇所を自主的に 刻々と通報することから始まった運動でした。

また南アフリカでは、位置情報発信機能を使った野生動物保護のための環境観測システムも開発されています。これも、携帯端末の発信する位置情報が、生物資源保護、環境保護など、広範囲に役立つことを示す良い例だと思います

NTTドコモ社は新技術を発表した数少ない企業の一つでした。中でも、人の目の動きで、イヤホンの音量を調節す

ドコモ社の目の動きで音量調節する技術は大きな関心を集めた。

る技術の実演には、多くの見学者が集まりました。病気や事故など、なにかの理由で言葉を発することができなくなった人など、色々な用途で使えるようになると思います。そういう意味で、可能性の大きい、先の楽しみな技術だと思いました。(写真)

その他にも、NTTドコモ社は、気象センサー、太陽光発電式携帯端末など、上質の技術とアプリケーションを幾つも展示していました。人や地域のニーズは多様です。そういう人々と共同で、一つ一つの技術がニーズに合うよう磨き上げていけば、このような技術が人や社会に生きて、更に役立つと思いました。

MWCの広い会場を見て回り、今、技術を持つ側に必要なのは、それを必要とする人々に出会い、個々の目的、情況に合うよう、技術を練り上げていくことではないかと思いました。人と技術とをマッチングをさせる方法は、ネットを使って作る、また展示会で技術の需要者と供給者が会するなど、色々あります。けれども、人と技術の真の出会いを可能にするのは、技術を持つ人、技術を理解する人が、受益者(と思われる人々)の現場に出て行くことではないでしょうか。 その場面で、双方の感性と創造性とが触媒になり、技術が人や社会に充分役立つものになるのです。

(この記事は平成22年5月10日発行の通信興業新聞に記載されました。)

MWC 訪問記−2、発展を支える携帯電話と発電装置

電気のない村に携帯電話を

現在携帯電話は、アフリカや南アジアを初めとする発展途上国で、生活に必要不可欠の道具になりつつあります。SMSを使った少額ファイナンスの急速な発展は、そういう諸国を活気づけました。SMS自体は高度な技術ではありませんが、利用者の必要性と携帯電話の機能とが上手く結びついた、ローテク イノベーションの好例です。

SMSによる少額の送金が普及し始めると、電線の届かない地域の人々にも、携帯電話は必要となります。その需要に応えるため、基地局に必要な電力を、太陽光や風力をエネルギー源として発電する設備を提供する会社がいくつかありました。

VNL社の携帯電話用太陽光発電装置

その一つが、インドのVNL社です。VNL社は僻地を対象にした電気通信用発電装置に的を絞り、そのための技術開発、商品開発、低価格設定が売りものです。写真に写っているように、“地方コミュニティーのコミュニケーション Communications for rural communities”がキャッチフレーズ(写真)。この装置は6時間で設置でき、太陽光のみ使用して発電。耐久テスト済みで、現在、インドやアフリカの通信事業者、通信設備建業者と商談が進行中とのことでした。

太陽光発電装置は村のコミュニケーション インフラ
ゼファー社の風力発電装置。手に持つブレードはボーイング旅客機と同じ素材。

優秀な技術を持った日本の会社が、風力発電装置を製作していることを知ったのは嬉しいことでした。ゼファー株式会社 (Zephyr Corp.) は、小型風力発電装置の専門メーカーです。実際には、太陽光と重油発電とを組み合わせたシステム(ハイブリッド)を提供し、十分な風力がないときにも電力供給を続けられるようにしています。写真の風力発電設備の重さは18キロ弱。鉄柱の先についているブレード(はね)は、軽くて丈夫。ボーイング社の旅客機の翼と同じ素材で作られており、どんな風力にも耐えるそうです。航空機のために開発された高度な技術が、このような形で生かされていることに感心しました。(写真 ゼファー社)

シンガポールに本社を置くアジアの国際企業、Eltek Valere社も同じくハイブリッドを提供しています。この会社のハイブリッドは、太陽光と重油を使った電池です。こちらもやはり電話会社に的を絞った発電設備でした。ゲリラによる誘拐の危険のあるアジアの某国奥地に発電設備を設置した際には、現地有力者の協力を仰いだといいます。発展途上国では、技術力だけでなく、設備を設置する村の人とつながりを持つことも、またビジネスのうちなのです。

通信キャリアの戦略的CSR

通信事業者の社会貢献活動の展示もありました。ボーダフォン財団が、ロックフェラー財団など、他の財団と共に国連と共同で進めるmHealth(mヘルス)プログラムです。このプログラムは、携帯電話を使った、発展途上国向けの、乳児健康診断、エイズ予防など公衆保険衛生向上を目指す個別のプロジェクトに資金提供するのが目的です。MWC会期中には、フランステレコムの出資するオレンジ ヘルスケアの参加も発表されました。

このように、国連機関など公的機関と提携し、CSRをアピールしつつ、長期的視野で事業機会、開発アイデアを捉えていこうとする大キャリアのあることは、日本企業にも参考になると思います。急がば回れも戦略なのです。

(この記事は平成22年4月26日発行の通信興業新聞に記載されました。)

MWC訪問記−1,技術の受益者は誰?

移動体通信産業の一大展示会

去る2月15-16日、バルセロナで開かれた、Mobile World Congress (MWC)を訪問しました。MWCは、移動体通信産業の世界規模の展示会として有名です。毎年1月に開かれるためもあり、その年の移動体通信産業全体の行方を窺うために、産業界では重要視されています。 都心近くのエスパーニャ広場に面した広大な展示会場に、華麗で大規模なブースを出すアジアのメーカーや、通信キャリア、また、的を絞った市場に向けて技術開発をする中堅のメーカーなど、移動体通信を支える技術、サービス、人、システムが一同に会する壮大な展示会でした。(写真 会場風景)

MWC 会場風景

携帯電話ではない、パームトップコンピューターだ

まず印象づけられたのは、携帯電話の機能は非常に多様化し、電話を越えて、パームトップコンピューティングに成長したことです。こういう高機能携帯電話機に、「スマートフォン」というネーミングがあるのもうなづけます。

スマートフォンには多くの使い方がありますから、展示のテーマも多様です。

例えば、健康管理やフィールドセールスなど、携帯端末をデータ通信に組み込んで使う多様なアプリケーションを展開するサムスン。この展示には、1980年代初め、コンピュータがオフィス用に普及し始めた頃、オフィスショウなどに行くと、各メーカーが、次々にアプリケーションを展示していた様子を彷彿とさせられました。携帯電話は、コンピュータの辿った道を歩いているのです。

携帯電話は、生活用具としての美と使いやすさを満たすデザインを追求する方向にも発展しています。そこに力を入れているのがソニーエリクソンやHTC。ハンドバッグやポケットに入れて持ち運びやすいよう小型化するハンドセット、そこにキーボードという、スマートフォンには欠かせず、しかも一定の大きさを必要とする機能を、使いやすさを損なわず、如何に組み込むか?これはチャレンジです。

他にも、60日間の耐久時間(電池)が売り物の携帯端末を出展したサムスン、携帯端末で映画館のような迫力あるサウンドを楽しめるシステムをデモするドルビー。また、マイクロソフト社は市場リリース間近のWindows Pohne 7をデモンストレーション。それに多くの人々が見入っていたのは、さすがは、機を見るに敏な人々の集まる展示会だと思いました。あらゆるITメーカーが、携帯市場の波に乗ろうと、しのぎを削っているかのようでした。

この技術はどこに行くのだろう?

どのブースでも素晴らしい技術が次々に展示されていましたが、一つ一つの技術は素晴らしいものの、それが誰の、どういうシチュエーションで役立つのでしょうか。目の前に展開する技術発展は、何を目的に、何処に行こうとしているのか?目的も受益者も、きっとある筈ですが、この展示会では、そこが見えないと思いました。それは、ある程度しかたないかもしれません。この展示会自体が移動体通信の専門家による専門家のための展示会ですから、技術の受益者は参加していないのです。そこが、 昨年(2009年)ジュネーブで開催されたITUテレコムワールドとの大きな違いだと思いました。ITUの展示会には、通信キャリアやメーカーの他、多数のNGOも参加し、ICTを発展途上国や身体しょうがい者に役立てるプロジェクトなどを展示していました。

技術の受益者が誰か、端的にわかる情況の一つが、通信インフラの不十分な発展途上国です。発展途上国や、通信インフラのない地域、状況で使える技術や機器に注目して見て行くと,電力や、メンテナンスの人材のいない地域に向けた製品がいくつかありました。

(この記事は平成22年4月19日発行の通信興業新聞に記載されました。)